前穂高岳・奥穂高岳
2012年(平成24年)10月12日

メ モ
日本国内にある三千メートル峰はその数え方によりいろいろな数字があるが、Wikipedia等によれば21座というのが定説のようだ。この考え方によって
私の山歴を振り返ってみると、現時点で20座登っており残されているのは涸沢岳のみという状況だった。涸沢岳は白出のコルから20分ほどで登ることができ、40年近く前に奥穂高に登ったついでに行っておけばなんということはなかったはずだった。しかし当時は三千メートル峰踏破などということは頭になく、また涸沢岳の存在自体があまり意識の中になかったのだった。
そんなわけで今になって是非とも涸沢岳に登らなければという羽目になったが、いざ行くとなるとどのルートをとるかが問題となった。一番楽なのは上高地から横尾経由で往復するルートだが、上高地から横尾までの道程が長くてあまり面白みがない上に、その結果が涸沢岳のみでは少し物足りない。
1泊2日の山歩きとして考えられるその他のルートとしては、行きか帰りに重太郎新道を利用することだった。この道は岳沢小屋から前穂までが急峻で、下りに使うのは気が引けたが登りに使うのも相当な覚悟が必要だった。今から38年前の昭和49年の5月にこの道を歩いて前穂と奥穂に登ったが、そのときはまだ20歳代で体力もあり冒険心もあったから行けたのだと思う。しかし果たして今この同じルートを登ることができるのか不安な点もあった。
とは言うものの、やはり行くのはこのルートしかないと考えて10月中旬の平日で天気の良い日を狙っていたところ、12日から13日にかけてが都合が良さそうなので決行することとした。
11日の午後9時50分に枚方の家を出発し、第二京阪、京滋バイパスを経ていつものとおりの上高地への道を行く。中津川から国道19号を走り、薮原から境峠を越え奈川度ダムに出て沢渡大橋の駐車場に着いたのは12日の午前2時50分だった。金曜日ということもあり駐車場は良く空いていた。5時40分発のバスに乗るまで仮眠をとる。
少し微睡んでから5時頃に起き出して支度をしバスに乗り込んだ。バスはほぼ定刻に発車したが途中の停留所で満員になり、上高地には少し遅れて6時15分頃に到着した。バスを降りて梓川沿いに河童橋まで行って穂高を見るとその稜線は雲に覆われていた。橋を渡り、気持ちを引き締めて岳沢に向かって足を踏み出した。

行 程
(国土地理院地図)

 
上高地−岳沢小屋−紀美子平−前穂高岳−奥穂高岳−穂高岳山荘(泊)

天 候 晴れ


早朝の河童橋。紅葉のシーズンのためか、平日にもかかわらずそこそこの人出だった。目指す穂高の稜線は雲に覆われていた。

しかし上空には青空が覗いており、雲の動きも速く、そのうち晴れてくる気配がした。

梓川右岸の道を行く。左岸の道とは違って人影は殆ど見られなかった。

河童橋から15分ほど歩いて岳沢登山道との分岐に着く。このまままっすぐ続くのは明神池方面への道。

付近には幾つかの小さな沢が流れている。早朝で人もいなくてなかなか雰囲気が良いところだ。

付近のベンチで定番の朝食をとってからいよいよ登山道に入って行く。果たして計画通りに行くのか不安感は消え去らない。

ひっそりとした針葉樹林の中の道を行く。38年前に登ったときの記憶は全くない。

30分ほど登って行くと樹林の間から稜線の雲が切れて行く様子が見えた。
青空の色からして今日は絶好の天気になると思われた。

このあたりの道はそれほどの勾配もなく歩きやすい。

登山口から1時間ほどで小屋までの中間地点に着く。ここで小休止。まわりの木々は針葉樹からほんのりと色付いた落葉樹に変ってきた。

中間点からしばらく行くと岳沢越しにすっかり晴れ上がった穂高の峰々が眺められた。
写真は奥穂高岳と吊り尾根。何時間かあとにはあの稜線を歩くことになるはずだが、果たして・・・。

岳沢の左岸沿いの道は少しづつ傾斜を増して行く。
標高2030mの胸突八丁を過ぎてほどなく、正面に前穂高へと続く重太郎新道のある尾根が見えた。

登山口から2時間ほどで小屋見峠に着く。岳沢の対岸の樹林の中に小屋が見える。
まわりは黄葉の真っ盛り。後ろは奥穂高岳。

岳沢を横切って8時55分に岳沢小屋に着く。
小屋の前のテラスで一休みする。

見上げれば天狗の頭がのしかかってくるようだ。

振り返ると上高地の彼方に霞沢岳や焼岳、乗鞍岳などを眺めることができた。
天気は上々です。

これから登って行く尾根を見上げる。
ここからが重太郎新道の核心部になる。

小屋から再び岳沢を横切って尾根に取り付く。
岳沢にはまだ残雪があった。上に見える稜線は吊り尾根。

重太郎新道の下部。綺麗な黄葉で覆われています。

乗鞍岳と焼岳を振り返る。

鮮やかに紅葉した木々の間を登って行く。つづら折りの急登が続く。

紅葉を見ながら40分ほど急登を続けると垂直な岩や長い梯子があり、
いよいよ重太郎新道の核心部に入ってきたと思って少し緊張する。
38年前の時の記憶に残っている梯子の急登はここのことかも知れない。

梯子の登りを終えて展望の開けたところから振り返ると、
黄葉した岳沢の樹海の彼方に上高地から乗鞍岳方面が一望できた。
乗鞍岳にかかっている雲は徐々にその量が増えてきているようだった。

小屋から1時間ほどで10時15分にカモシカの立場に到着。
前穂高頂上までは小屋から4時間かかるので、ここでようやくその1/4ということになる。
奥穂高(写真右端)、ジャンダルム(同中央)、西穂高(下の写真)にかけての峰々を眺めながら大休止をとる。

カモシカの立場から天狗の頭や間ノ岳、西穂高方面を見る。

カモシカの立場の先にある梯子とクサリと岩の登り。
なかなか厳しいところだが、その分高度を上げていくことが実感できる。

カモシカの立場から30分ほど登ると森林限界を超えてまわりにハイマツが現れてくる。
目指す前穂高も目の前に見えてくるが、まだ2時間はかかりそうだ。

高山帯になりまわりの視界が開ける。
右に明神岳、左に奥穂高や西穂高を眺めながらまだまだ急登を続けて行く。

ジャンダルムもだいぶ近づいてきた感じがする。

11時15分に岳沢パノラマに着く。名前の通り岳沢が一望できるところだ。
随分登ってきたはずだが、小屋の赤い屋根が思いの外近くに見える。

森林限界を越えたあとは梯子やクサリの急登はなくなったが、それでも写真のような岩場の急登はどこまでも続く。
正面に見えている前穂高がなかなか近づかない。

11時55分に雷鳥広場を通過。

雷鳥広場の少し先にある大岩乗越を振り返る。取り付けられた梯子が曲がってしまっている。
この先にはクサリ場の急登があったが疲労感も大きくなってきたので下りの人を待つ間少し休む。

大岩乗越付近から眺めた明神岳。
ほぼ同じ高さになりました。


クサリ場を急登すると不意に平坦地に飛び出した。そこが紀美子平だった。
12時25分に到着。小屋から約3時間かかったことになる。


紀美子平から見た奥穂高岳。
正午を過ぎたので、ここで少し腹拵えをしてから前穂高に向かった。

岩の道を急登すること30分ほどでようやく前穂高岳山頂に辿り着いた。小屋からちょうど4時間。
時刻は午後1時を回っていたが、雲に覆われることもなく雄大な眺めを満喫することができたのは幸いだった。

西の方には吊り尾根を隔ててこれから行く奥穂高岳。左には西穂高岳へと鋸の歯のような岩峰が続く。

奥穂高岳の右には今回の山歩きの最終目的地である涸沢岳が続く。
更にその右に北穂高岳、槍ヶ岳と我が国最高級の嶺々が連なる。

北穂高岳と槍ヶ岳。北穂南稜に刻まれた道がはっきりと見える。

槍ヶ岳の右には燕岳から大天井、常念の山並みが連なる。
左遠くに見えるのは針ノ木岳と蓮華岳。

岳沢と上高地を見下ろす。
かなり雲も増えてきてこの稜線を覆うのも時間の問題のようだ。

登りの半分ほどの時間で紀美子平に戻り、少し休んでから奥穂高に向かう。
歩くほどに雲が昇ってきて稜線を覆うようになる。15分ほどで吊り尾根の最低コルを通過。

一瞬雲が切れて前穂高岳が姿を現した。
今日、稜線上で前穂高を見たのはこれが最後だった。

雲は岳沢側から流れてくるため、時折風下側の涸沢方面の景色を見ることができた。

しかしそのうち雲は完全に吊り尾根を覆ってしまった。
行く手の霧の中に黒い岩峰が現れ、それを乗り越えるとまた次の岩峰が現れると行ったことを繰り返す。
そうこうしているうちに長いクサリ場に着く。登り切ったところには南稜の頭の道標が立っていた。
このクサリ場は吊り尾根の最大の難所のようで、霧の中で視界が利かなかったのは幸いだったというべきかも知れない。

南稜の頭から岩だらけの道を緩く登って10分ほどで午後3時35分に奥穂高岳山頂に到着した。
紀美子平から1時間40分ほどで、意外と早く着いた。

奥穂高山頂は風が強く、雲が盛んに通り過ぎて行く。
ふと風下側を見るとブロッケン現象が確認できた。久しぶりに見る光景だった。

黒い影となったジャンダルム。

奥穂高岳の山頂で風を避けながらしばらく休憩する。
山頂から小屋まで下る間は冷たい風に曝されて寒いことこの上なく、梯子の直上から小屋を確認したときはほっとした。

穂高岳山荘には午後4時半着。下手をすると日没近くになると思ったが、明るいうちに小屋に着くことができて何よりだった。しかし受付で、今の季節では午後3時を過ぎると稜線は寒さが増して危険なのでもっと早く行動せよと注意を受けたのだった。

夕刻、小屋の前の広場から前穂高岳を眺める。雲はとれて空はすっかり晴れ上がっていた。

5時から夕食を頂いたあと小屋の裏に回って夕景を見る。
部屋の名前は北岳で泊まり客は6人ほど。小屋全体では自炊客を含めて70から80人ほどと思われた。
夕食を頂いたあとはすることもなく、疲れたこともあって顔を洗ってから6時すぎに横になった。


コースタイム
上高地(6:20)−岳沢登山口(6:35-6:50)−中間地点(7:50-7:55)−岳沢小屋(8:55-9:10)
−カモシカの立場(10:20-10:35)−岳沢パノラマ(11:15)
−雷鳥広場(11:55)−紀美子平(12:25-12:40)
−前穂高岳(13:10-13:25)−紀美子平(13:45-13:55)−奥穂高岳(15:35-16:00)−穂高岳山荘(16:30)   

涸沢岳に続く


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