甲斐駒ヶ岳
2010年(平成22年)5月2日

メ モ
今年のGWは晴天が続くとの予報に、久しぶりに日本アルプスへ行ってみようという気になった。しかし山小屋が混むのは出来るだけ避けたいので行くところは限定されてくる。いろいろ考えた結果、1泊2日で南アルプス北部の北沢峠から仙丈ヶ岳を往復することとした。この時期、戸台近くの仙流荘からのバスは歌宿までしか入らないため北沢峠までは2時間近くの林道歩きを強いられる。ある程度の山好きでない限りこのような不便なところを選ぶことはなく、小屋も混雑しないだろうとの推測からだった。
一方、交通手段はマイカーということになる。その日のうちに北沢峠に入るには朝の6時に家を出発すれば十分だが、高速道路の混雑は予測しがたいので時間的な余裕を考えるとやはり深夜の走行ということになる。そうなると北沢峠には午前中に着いてしまい、その日は時間をもてあますことになる。
であれば、いっそのこと始発のバスで行けば、少々きついかも知れないがその日のうちに甲斐駒ヶ岳を往復することも可能ではないかと考えた。たとえ頂上は無理としても行けるところまで行くことにして前日長衛荘に予約したところ宿泊者は40名ほどということだった。
2日の午前零時ちょうどに家を出発し、名神、中央を走る。車は少し多い感じがしたが渋滞はなく4時前に伊那IC に着いた。カーナビに導かれるままに仙流荘には4時15分着。車を止めて少し休憩した。そのうちにまわりが明るくなってきたので付近を調べてみると、仙流荘から少し進んだところに南アルプス登山者用の無料の大きな駐車場があったのでそこへ移動した。
始発は6時5分。登山届けを出してから乗車券を買ってバスを待つ。無謀な春山登山者を監視する警察の方(?)に積雪の様子を聞いたところ、数日前に降った雪で例年より多いという。とたんに緊張感が全身を駆け巡る。
マイクロバスは十数名の乗客を乗せて5分ほど遅れて歌宿目指して出発した。戸台手前の戸台大橋を渡ったあと、バスはグングン高度を上げて馬ノ背から続く尾根の北側の山腹を巻くように走って行く。左手眼下の谷底には戸台川が流れている。35年前、甲斐駒ヶ岳と仙丈ヶ岳に登ったあと、暑い日差しを受けながら戸台まで歩いた夏の日のことを思い浮かべた。林道にバスが通じた今、あの河原沿いの道はどうなっているのだろうか。
南アルプスに関する運転手さんの説明を聞きながら程なくバスは標高1680mの歌宿に着く。時刻は6時40分。鋸岳の展望台となっている広場で支度をして45分に北沢峠目指して歩き始めた。

行 程

歌宿

北沢峠

甲斐駒ヶ岳

北沢峠(泊)

仙丈ケ岳

北沢峠

歌宿

距離     :  27.3km
最大標高差: 1,348m
累積標高  : 2,534m
 
天 候

晴れ時々曇り
 
(気象庁 : 過去の天気図) 

山行記録

午前5時45分ごろの仙流荘バス停。
GW 中にもかかわらず、バスの運行が歌宿までなので予想どおり登山者は少ない。
始発は午前6時5分だが、少し遅れて出発しました。

鋸岳を目の前にした歌宿。
午前6時40分ごろに到着。そこにはすでに登山を終えて帰途につく人たちがバスを待っていた。
靴紐を締め直してから北沢峠目指して出発する。


舗装された林道を歩いて行くと前方に双児山から甲斐駒にかけての稜線が見えてきた。
あまりにも高く、今日本当にあそこへ登るのか実感が湧かなかった。


しばらく歩いて右に大きく回り込むと行く手に雪を残した平右衛門谷が現れた。その下の方を林道が横切っている。
この平右衛門谷の左岸側の山腹に丹渓新道がある。35年前に仙丈ヶ岳から下ってきた道だ。

林道から北沢峠方面を見る。正面の山は栗沢ノ頭とアサヨ峰か?

仙丈ヶ岳の稜線を見上げる。

午前8時頃大平小屋を通過。藪沢はここから取り付く。
ここも35年前に来ているはずだが全く記憶にない。


35年前に歩いた藪沢新道への入口。

午前8時15分に北沢峠着。思いの外早く着いた。
ここまでの林道は除雪してあり、バスが通れないことはないと思うが、なぜ歌宿までしか入らないのだろうか。


最小限の荷物をまとめて残りは小屋に預けた。ついでに寝る場所も1階のの右奥の端に決める。
そのあと午前8時40分に甲斐駒に向けて出発。


峠付近はまだ雪に覆われており、双児山へも最初から雪の道だった。
あまり人が入った様子もなくかすかな踏み跡を見ながら登って行く。


南アルプス特有の針葉樹林の中の急登はどこまでも続く。
道が凍り付いたところも出てきたので途中でアイゼンを着装した。


登り始めて1時間半ほどしてようやく展望の開けたところに出る。
振り返ると明日登る予定の仙丈ヶ岳が白銀を輝かせていた。

行く手の樹林の間から青空が覗くたびにそろそろ双児山かなと思ったことが何度あっただろうか。
登れども登れども針葉樹林は続く。

疲労感も高まってきた頃ようやく双耳峰を繋ぐ稜線に出る。
そこから少しで午前10時50分にようやく双児山に辿り着いた。

2時間以上も急登を続けてかなり疲れたが、双児山山頂からは南アルプス北部の雄大な眺めを得ることが出来た。
写真は振り返り見た仙丈ヶ岳。

仙丈ヶ岳の左遠くには日本第二の高峰北岳が第四の高峰間ノ岳と並んでいる。右遠くには塩見岳も見える。
そして正面には栗沢ノ頭から始まる早川尾根が鳳凰三山まで続く。


行く手には甲斐駒ヶ岳の金字塔。右には摩利支天も見える。手前は駒津峰。

昼近くにもかかわらず、まずまずの眺めに元気付けられて駒津峰を目指す。

この駒津峰への登りが今日一番苦しかったところだ。
登りそのものは大したことはなかったが、双児山へ急登した疲れがあったのと、
すでに昼近くで時間を気にしてつい急ぎ足になり勝ちだったためだ。

駒津峰の登りから双児山を振り返る。

苦しい登りを続けて駒津峰に着いたのは午前11時40分。
北沢峠から3時間かかったことになる。

行く手には摩利支天を従えた甲斐駒ヶ岳が大きく迫る。
駒津峰まで標準タイム以上の時間がかかってしまったので、これから先果たしてどうなるのか不安だったが、
多少時間がかかっても疲れないようにゆっくり登って行こうと考えて、甲斐駒ヶ岳に向かって小さな一歩を踏み出した。


山頂部のズームアップ。
一体あの岩と雪の斜面のどこを登って行くのだろうか。
35年前の時は山頂から直登ルートを駒津峰まで下ったが、当然のことながら全く記憶にない。

鞍部への下降点から甲斐駒ヶ岳を見る。
登頂ルートは手前の岩稜を経て、岩層に沿って右斜め上の方へ辿って行くように見える。

駒津峰から下って鞍部から駒津峰を振り返る。
山頂部の2カ所の雪の下りに少し緊張した。

鞍部付近から鋸岳を見る。なかなか急峻な稜線だ。

鞍部付近の雪と岩。

鞍部から最後の登りに取りかかる。まずは岩のやせ尾根の登りだ。

岩尾根を行く。ルートはよく分かるが、所々残雪に刻まれたステップを登る。
下るときは慎重に行動する必要があるところだ。

岩稜を登り詰めると岩層に沿って右上方へトラバース気味に登って行く。

登ってきた道を振り返る。手前の岩稜沿いのルートがよく分かる。
駒津峰の後ろに双児山も少し見える。

岩の斜面を右にトラバースしながら登って行く。
途中で下山する数パーティとすれ違う。

午後1時10分、甲斐駒ヶ岳山頂に至る。ほぼ目標としていた時間に登ることが出来て一息つく。
まだ20代だった35年前の時のことは殆ど記憶にないが、
ここまで来たことによって若い頃の自分と再会したような気になるのだった。

何はともあれまずはめぼしい山々を。
始めに仙丈ヶ岳を望む。手前には辿ってきた駒津峰と双児山が見える。

仙丈ヶ岳をズームアップ。

仙丈ヶ岳の左には北岳や間ノ岳。
手前は栗沢ノ頭からアサヨ峰、鳳凰三山へと続く早川尾根。

北岳と間ノ岳。槍・穂高に勝るとも劣らない山容だ。

鳳凰三山。この山は甲斐駒から眺めた姿が最高だ。
今日は残念ながら富士山は見えない。

山頂の祠のまわりにはいろいろな石碑が無造作に置かれていた。

登頂したときにいた単独行の方も下ってしまい、ただ一人残った山頂から明日登る仙丈ヶ岳を眺める。
このあと午後1時40分に山頂を辞して北沢峠に向かった。


岩稜帯を下って鞍部の近くから駒津峰を見る。
登り返しがきつそう。

登り返して駒津峰から甲斐駒ヶ岳を振り返る。
よくもあんなところを登り下りしたものだとつくづく思います。

駒津峰からの双児山。
次はあそこまで登り返す。

双児山への登り。今日最後の登りです。

双児山から南アルプスの景色を見納める。
北岳、間ノ岳と塩見岳。

北岳遠望。日本第二の高峰に相応しい風格ある山容だ。

仙丈ヶ岳。
今日甲斐駒ヶ岳に無事登ることが出来たことは明日への大きな自信となった。

双児山から仙丈ヶ岳をズームアップ。
明日の雪の稜線歩きが楽しみだ。

双児山から甲斐駒ヶ岳を振り返る。
甲斐駒ヶ岳にお別れをして午後3時25分に北沢峠目して下っていった。


コースタイム
往 : 歌宿(6:45)−北沢峠(8:15-8:40)−双児山(10:50-10:55)−駒津峰(11:40-11:55)
    −甲斐駒ヶ岳(13:10)
復 : 甲斐駒ヶ岳(13:40)−駒津峰(14:35-14:40)−双児山(15:10-15:25)−北沢峠(16:25)

仙丈ヶ岳に続く


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