北穂高岳
(涸沢から北穂高まで)
2006年(平成18年)10月20日〜21日

メ モ
涸沢はシーズンも終わりに近く、テントが数張と涸沢ヒュッテと涸沢小屋の周りに何人かの人影が見られたのみでひっそりとしていた。両方の小屋とも間近に迫った冬の到来に備えて店終いの支度が始まっていた。冷たい風を避けるためにヒュッテの近くの岩陰に座り、買ってきたお弁当を戴く。空はすっかり曇り、涸沢岳の背後から盛んに雲が流れて来る。今日の午後あたりに北日本を寒冷前線が通過するため、その影響で天気は下り坂になっているのだろう。しかし予報は曇りとのことだったので、大きな崩れはないだろうと希望的観測をする。
ゆっくりと休んで疲れもとれ、腹ごしらえも出来たので12時10分に北穂高目指して出発する。念のため防風を兼ねて雨具の上着を着用する。涸沢小屋に向かって石畳の道を進み、小屋の横から北穂沢沿いの道に入る。岩がゴロゴロした急な道だ。少し休んで疲れもとれたはずだったが、急登が始まると睡眠不足のこともあって急に体が重たくなる。登るにつれて傾斜もきつくなり眼下の涸沢ヒュッテがドンドン小さくなって行く。途中で何人かの下山者とすれ違いながら夏の草花の残骸に囲まれた道を登って行く。背後の前穂高北尾根が迫り上がってきてかなり高度感を増してきた頃、ポツリポツリと水滴が落ちてきた。通り雨ですぐ止むに違いないと思ってそのまま登り続ける。事実そのあとしばらくは雨とも云えない水滴が降ったり止んだりで大したことはなかった。やがて左手前方に南稜と呼ばれる尾根が近づいてくる。北穂沢から離れてその南稜に向かうころ、何とか見えていた涸沢や前穂、奥穂も遂に雲に覆い隠されてしまい周りは霧に包まれてくる。
南稜の取り付にあるクサリ場に着いたのは午後1時30分ごろ。このころになると相変わらず降ったり止んだりしていた雨が雪に変わり始めた。一体どうなっているんだと天気予報を恨んでも仕方のないことだった。凍える手でクサリを掴み、続いて現れた梯子を登って南稜に出た時はかなり疲れも出てきた。
南稜を辿る道はこれまで以上に傾斜を増してくる。行く手は霧に包まれていて岩影がおぼろにしか見えない。しかし道標はしっかりとつけられているので迷うことはない。きつい登りはいつまでも続き、頭上に現れた岩影を何とか越えてもまた次の岩影が現れるという始末だった。相当嫌気がさしてきた頃ようやく二番目のクサリ場を通過する。クサリ場を越えてしばらく登って行くうちにミゾレのような雪が降り始める。それほど激しい降りではなかったがこれ以上濡れるとまずいのでリュックカバーを取り付ける。やがて傾斜もようやく緩くなり南稜のテントサイトに辿り着く。周りには10日ほど前に降った雪が溶けずに残っていた。
テントサイトからは北穂の南峰を巻く道になるので登りのきつさは少しましになったが、一箇所崖っぷちを横切るところがあったので張られたロープをしっかりと掴んで慎重に通過した。ほどなく涸沢岳方面への分岐につく。道を右に取り頭上に覆い被さるような大岩の下を通って一登りすると北穂高岳の小広い平坦な山頂に躍り出た。時刻は午後2時50分だった。周りは霧で何も見えなかったが、とにかく山頂まで辿り着いてやれやれと云ったところだった。北穂高小屋は山頂のすぐ下にあったので写真を撮ってからすぐにその小屋に向かった。
(下の写真は21日の下山時に撮影したもので編集しています)

行 程

上高地
↓↑
横尾
↓↑
涸沢
↓↑
北穂高岳
↓↑
北穂高小屋(20日泊)


距離(2日間): 34.6km
最大標高差 :1,594m
累積標高   :1,690m
  
天 候

20日:晴れのち曇り
    時々雨と雪  
21日:快晴
 
 (気象庁 : 過去の天気図)  

山行記録

涸沢から北穂高を目指す(北穂高岳山頂は左手に見えるピークの右側の頂き)
まずは北穂沢を登る 北穂沢からの奥穂高
涸沢越しに前穂高を見る その右手には奥穂高岳
南稜目指して登り続ける 北穂沢から南稜へ向かう
南稜取り付きのクサリ場 クサリ場に続く梯子を登ると南稜の上に出る
南稜から常念岳と蝶ヶ岳を見る。屏風ノ頭(手前)も見下ろすようになる
南稜から見た涸沢と前穂高北尾根 南稜からの常念岳
またまたクサリ場が出現 右手に北穂高北峰が見える。もう少しの我慢
南稜テントサイト付近からの前穂高岳と北尾根
南稜のテントサイト付近から見た奥穂高岳と涸沢岳
南稜のテントサイトから北穂高南峰と北峰(右)を見る 涸沢岳への分岐点を通過
南峰の下を巻いて北峰へ向かう。10月7日に降った雪が溶け残っている 北峰直下の大岩。頭上に覆い被さってくるようだ
北穂高岳山頂に着く 北穂高小屋で一泊。2階のノルダーカンテをひとり占め
北穂高岳からの展望”に続く

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