吾妻連峰
(東吾妻山・一切経山・東大)
2004年(平成16年)10月16日

メ モ
東北地方の南部には飯豊や朝日連峰などの雄大な山並みがあるが、これらは何れも日本海側の多雪地帯にあるためその山稜や渓谷は急峻で、日本アルプスの3千米級の山々に優るとも劣らない山容を呈している。一方ほぼ同じ地域にある吾妻連峰はこれら二つの山塊に匹敵する規模を有しながら、その位置が内陸部にあるために日本海の厳しい気候の影響を直接受けることがなく、その山容は森林と池塘を散りばめた湿原に代表されるように大らかで女性的であり、また比較的地味な感じを受ける。
4ヶ月に及ぶ厳しい夏もようやくようやく終焉を迎えて近頃は一段と秋めいて来たが、今年の秋山は以前からこの吾妻連峰と決めていたので、東北地方の天候が良さそうなこの週末が絶好の機会と捉えて実行に移すことにした。
前日の夕方東京駅まで行き、18時36分発の“つばさ141号”に乗り込む。週末にもかかわらず車内は割合空いている。夜の東北路を北上して福島着は20時16分。駅前のスーパーで食料などを仕入れて東口のビジネスホテルに泊まった。
翌朝5時頃に起床。窓から外を見るとまだ暗いのに星が見えない。どうも曇り空のようだ。支度をして5時半頃にホテルを出る。駅前のタクシー乗り場まで行き、先頭の車の運転手さんに浄土平までの料金を聞くと7千円位という。そんなもんかなと思って車に乗り込み5時45分に浄土平目指して出発する。既にまわりは明るくなっているが空には雲が多い。
車は早朝の福島市街を通り抜けて吾妻連峰目指して西に一直線に進む。女性の運転手さんと福島の名産などのよもやま話をしている間に道は山の中に入って行く。高湯温泉を過ぎ、“つばくろ谷”や“天狗の庭”などのいわゆる吾妻八景を通り過ぎると、早朝にもかかわらず多くのアマチュアカメラマンが屯してシャッターチャンスを狙っている。この中腹あたりは紅葉の真っ盛りだが、あいにくの曇り空でその鮮やかさも今一つのようだ。吾妻八景の名付け親の作家のことや、一切経山の謂われなどを聞いているうちに車は吾妻小富士の斜面をかけ登って浄土平に到着する。時刻は6時30分。広い駐車場には既に何台かの車が止めてあり、登山支度をしている人もいる。車を降りて運転手さんと別れてから、とりあえず目の前の吾妻小富士に登ることにした。


行 程


      浄土平←→吾妻小富士
↓       
     姥ヶ原←→東吾妻山
↓    
酸ヶ平

一切経山

家形山

烏帽子山

昭元山

東大巓

明月荘(泊)

距離(2日間): 26.3km
最大標高差 : 460m
累積標高   :1,529m
 





天 候

晴れ
 (気象庁 : 過去の天気図) 

山行記録

 まず、標高1707mの吾妻小富士に登る。整備された道を5分ほどで火口を取り囲む稜線上に立った。
振り返ると浄土平が一望の下だった。左手の湿原の向こうに見えるのはこれから行く東吾妻山。
浄土平の右手には一切経山が蓬莱山を挟んで東吾妻山と対峙している。
吾妻小富士の頂上は火口を挟んでちょうど反対側だったのでその登頂は割愛した。


 
 7時ちょうどに2日分の食料で重くなったリュックを担いでいよいよ吾妻連峰の縦走開始です。
最初に目指すのは東吾妻山。天文台とビジターセンターとの間をとおり、広い駐車場を横切って登山道に入る。


 
 紅葉に囲まれた湿原を眺めながら蓬莱山の麓を進む。
平坦だった道は一切経山への道を右に見送ったあとは緩い登りとなる。


 
 しばらく登って振り返ると浄土平の湿原を前にした吾妻小富士がこちらに火口を向けていた。


 
 登ること20分ほどで道は平坦になり、やがて東吾妻山と蓬莱山との間の広々とした鞍部に出る。
このあたりは樹木が少なく見通しがよい。
青空を背にした台地に向かって、笹原の中に木道が続いている。


 
 7時45分に鎌沼方面への道との分岐点に到着。
さらに木道を進んで行くと十字路に出た。そこが東吾妻山姥ヶ原登山口だった。時刻は丁度8時になる。



 
 十字路を左に折れて東吾妻山に向かってしばらく歩いたところでリュックを道端に置いて山頂を目指す。
道はそれほど急でもなくドンドン距離を稼ぐことが出来る。
そのうち前方が明るくなったと思う間もなく、突然樹林が切れてハイマツ帯に飛び出した。


 
 そこからは一頑張りで8時30分に標高1975mの東吾妻山の広々とした山頂に着く。
冷たい風が吹き抜ける無人の山頂からは360゜素晴らしい展望が得られた。


 
 まず眼に飛び込んできたのは南の方に天に向かって鋭い山頂を突き出す磐梯山だ。
その麓には小野川湖と秋元湖も見える。


磐梯山の左遠くには那須連峰から男体山や奥白根などの日光の山々が連なる。


 
 磐梯山の背後には尾瀬の燧ヶ岳や会津駒ヶ岳、越後三山などの上会越の山々も眺められた。


 
 西側から北にかけては中吾妻山の向こうに西大巓から西吾妻山、中大巓、東大巓、
昭元山、烏帽子山などの山々が波打つように連なっている。
眼下には谷地平の湿原も見える。


その右には前大巓から続く赤茶けた一切経山が大きく横たわっていた。
一切経山の彼方に見える山並みは蔵王連峰。
10月の東北の山はさすがに寒く、眺めに見とれている間に体が冷えてきたので、8時45分に山頂を辞す。


 
 空身の軽さでドンドン下って行き、途中でリュックを回収して9時10分に十字路に戻る。
つぎは十字路をそのまま真っ直ぐに進んで鎌沼に向かう。
しばらく木道を行くと湖畔沿いの遊歩道と合流する。鎌沼の向うに見える一切経山目指してその遊歩道を行く。


 
 酸ヶ平が近づいてくると浄土平方面からのハイカーの姿を見かけるようになってきた。
鏡のような鎌沼の水面にその姿を写す東吾妻山を振り返りながら広々とした酸ヶ平を歩いて行く。


 
 酸ヶ平を通り抜けて避難小屋には9時40分に着いた。一切経山への登りはこの酸ヶ平小屋から始まる。
取付きの結構急な道もしばらくの間で、15分ほどで稜線に出る。
振り返ると酸ヶ平や鎌沼の景色が素晴らしい。しかし全体的に緑色が支配的であまり秋らしい感じがしない。


聖地に向かう巡礼者のように登山者が列をなして稜線上を頂上に向かっている。
その群に混ざって頂上直下の斜面を一登りして標高1949mの一切経山山頂に10時5分に着いた。



一切経山の山頂も東吾妻山と同じように広々として眺めがよい。
山頂の北側に行くと眼下に五色沼を見下ろすことが出来た。
今日は曇り空のため湖面の眺めも今一つだが、それでもコバルトブルーの水面は神秘的な感じがした。



空模様は相変わらず曇りがちだが西の方には青空が見え、その下には遙かに西吾妻山から東大巓にかけてのたおやかな山並みが望まれた。
あんなに遠くの稜線まで本当に踏破することが出来るのだろうかと、長大な山並みを縦走する時の不安感がいつものように頭の中を横切る。
中大巓の右手遠くには飯豊連峰の姿も望まれた。
頂上にはひっきりなしに人がやってくるので早々に立ち去ることにして次の目的の家形山に向かう。


 
 一切経山の北斜面を駆けるようにして下って行くとすぐに樹林帯に入る。
その樹林帯を抜け、右手に五色沼を見ながら鞍部を行き、一登りすると標高1877mの家形山の頂上だ。10時50分に着く。
吾妻山の名前の元となったと言われる家形山の山頂からは福島市内が一望できた。


 
 家形山から見た、一切経山を背景にした五色沼。


 
 家形山から先は樹林の中の道になり周囲の展望とはしばらくお別れだ。
一切経山を越えると人の数はグンと減るが、さらに家形山から先は殆ど人影を見ることはない。
五色温泉方面への分岐点を過ぎて烏帽子山との鞍部の平坦な道を行き、11時25分に滑川温泉へ下る道との分岐点の兵子に着く。


 
 兵子を過ぎると烏帽子山への登りが始まる。
樹林の間から東吾妻山が望めるニセ烏帽子山には11時45分着。写真を撮っただけで先に進む。


 
 ニセ烏帽子山から少し下り、それ以上を登り返して12時10分に標高1878mの烏帽子山に着く。


 
 帽子山山頂の東側は樹林に覆われているが、西側は遮るものが無く頗る眺めがよい。
目の前には全山樹林に覆われた昭元山が立ちはだかっており、
その頂上を越えて行くには一汗も二汗も掻くことになりそうな感じがした。
昭元山の背後には西吾妻の山々が波打つように連なっている。


 
 烏帽子山から東大巓を見る。今日泊まる明月荘はあの山の向こうだ。まだまだ遠いなあ。
早朝からの山歩きでお腹も空いてきたのでここで昼食をとることにした。
岩がゴロゴロした山頂は風が冷たく寒い。簡単な食事を済ませてから昭元山に向かう。


 
烏帽子山から谷地平を望む。


 
 烏帽子山からの下りは、登ってきた薄暗い樹林の道とは対照的な明るいハイマツ帯の岩の道だった。
眼下の鏡沼を目指して急降下し、ほどなく樹林の中の鞍部に着く。
鞍部からほぼ下った分を登り返して午後1時5分に標高1893mの昭元山に着いた。


 
 昭元山の山頂は烏帽子山よりも高いが樹林に囲まれているために展望はよくない。
僅かに東側の樹林越しに東吾妻山から一切経山を経て烏帽子山までの、これまで歩いてきた山並みが望めた。


 
 昭元山の急坂を下り、東大巓への緩やかな道を登って行く。
樹林の丈が低くなり草地が見られるようになって、1時50分に谷地平から登ってくる大倉新道と合流する。
さらに木道を辿り、池塘が点在する湿地帯を登って2時10分に標高1929mの東大巓の頂上に着く。


 
 東大巓山頂直下の湿原から越えてきた山々を振り返る。手前から昭元山、烏帽子山、家形山。その右には一際高く一切経山。
東大巓山頂から平坦な木道をしばらく行くと明月荘を経て立岩へ下る道の分岐点に着いた。
明日の行程の西吾妻方面への道を左に分けて明月荘への平坦な木道を進んで行く。流れる霧の切れ間から遠くに広大な弥兵衛平湿原が見える。
東吾妻山から一切経山にかけての東吾妻一帯の景色とは全く違った雄大な景観を目の当たりにして、遙々と来てよかったと思うのだった。
 弥兵衛平小屋とも呼ばれる明月荘には2時30分に着いた。



コースタイム
浄土平(7:00)−東吾妻山(8:30)−一切経山(10:05)−家形山(10:50)−烏帽子山(12:10)
−昭元山(13:05)−東大巓(14:10)−明月荘(14:30)

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