会津駒ヶ岳
1995年(平成7年)5月27日〜28日

メ モ
昨年の秋の燧ヶ岳登山で秘境桧枝岐も案外東京から近いことを知り、残雪と新緑のこの時期に行ってみることにした。
浅草発7時10分の電車に乗るため午前5時過ぎに中山を出発し、品川で地下鉄に乗り換えて浅草まで行く。浅草からの日光行きの電車は登山客や観光客で満席だった。下今市で会津高原方面行きの電車に乗り換える。車内は割合すいていた。発車すると左手の車窓に男体山が大きく見えてくる。この山にもいつか登ってみたい。鬼怒川温泉を過ぎると電車は鬼怒川の支流の男鹿川に沿って山の中を走って行く。山王トンネルを抜けると福島県で会津高原駅はすぐだった。10時18分着。ここから桧枝岐に向かう。桧枝岐はかつては秘境といわれたところだが、新藤原と会津滝ノ原とを結ぶ野岩鉄道の開通により東京から日帰りでも行き来できるようになった。
予定ではバスで登山口の滝沢橋まで行くつもりだったが、8人乗りのタクシーに空席があるというので便乗することにした。このタクシーは駒ヶ岳の隣にある三岩岳に登る45人のパーティがチャーターしたものだった。会津高原駅で降りた人の殆どはバスで沼山峠から尾瀬に向かい、それ以外の登山者は我々だけのようだった。 
国道352号を走って行く途中で会津駒ヶ岳から三岩岳に連なる真っ白い山なみが遠くに望まれた。事前に駒ノ小屋の管理人に状況を聞いておいたが、思ったより雪が多く、しかも駒ヶ岳に登るのはおそらく私一人だろうと思って急に心細くなってきました。

行 程

滝沢橋

登山口

駒ノ小屋(27日泊)

会津駒ヶ岳

中門岳

会津駒ヶ岳

登山口

滝沢橋

距離     : 15.1km
最大標高差: 1,204m
累積標高  : 1,287m
 




天 候

27日:晴れ
28日:快晴
 
原典:気象庁「天気図」、加工:国立情報学研究所「デジタル台風」 

山行記録

 
 1日目。
三岩岳に登るパーティが登山口で降りたあと、タクシーはなおも桧枝岐川に沿って走り、
滝沢橋に着いたのは1130分ごろだった。


 
滝沢橋からしばらく車道を歩いて登山道に入り、登ること20分ほどで再び車道に出る。
あたりは駐車場になっており、右に回り込んで行くと木製の階段があった。そこが会津駒ヶ岳の滝沢登山口でした。
新緑を眺めながらお昼のお弁当を食べて、12時15分に出発。


 
 階段を登りきるとあとは急な坂道が続く。ジグザグ道を何度も折り返しながら登って行く。
黙々と登り続けること1時間半ほどでまわりはブナの樹林帯になる。
このあたりから雪が現れてきたのでスパッツをつける。


 
 雪の量が増えてゆくとともに傾斜はだんだん緩やかになってくる。
樹相もブナからシラビソに変わり、右手の樹々の間に駒ヶ岳から連なる白い稜線が見え隠れする。


 
樹林の中の緩やかな雪の斜面を滑るようにして下山してくる人達とすれ違いながら登り続け、
かなり高度を稼いだと思ったころ左手に燧ヶ岳が見えてきた。
去年の秋に登ったことを思い出しながらしばらく休む。


雪の斜面がかなり緩やかになり、樹々も小さく低くなって展望が開けてきたころ、
正面の右手に会津駒ヶ岳がその全容をあらわしてきた。
全身に雪をまとい真っ白だった。丘のようなその頂の上の晴れわたった空をやわらかな雲が流れて行く。


 
高原を散策するような気分でゆるやかな起伏の雪の上を歩いて行く。
頂上へ行く道を右に分けて小高い丘を登りつめて4時ごろに駒の小屋に着いた。
小屋は二階建てでまだ新しくて感じがいい。客室は二階で、階段をはさんで二部屋ある。私が泊まった部屋は他に二人いるだけだった。
暗くなる前に一階の自炊室で夕飯をすませる。そのあとは何もすることがないので、明日に備えて7時過ぎに寝ることにした。


 
 2日目。
目を覚ますと小屋の中が薄明るくなっている。起きて外へ出てみると日の出前で束の空が赤く輝いていた。
上天気を確認して小屋に戻り、朝食を取っている間に小屋の中に朝日がさし込んできた。
急いで支度をして山頂を目指す。


小屋から凍てついた雪の斜面を20分ほど登って午前5時ごろに会津駒ヶ岳の山頂に着いた。
頂上付近は小高い樹々に遮られて十分な眺めが得られないので、雪の斜面をすこし下ったところでまわりを眺める。
眼下には駒ノ小屋が小さく見えた。



遠くを見るとまず目に飛び込んできたのは昨年の秋に登った尾瀬の燧ヶ岳とその右後方の至仏山。


 
燧ヶ岳は左右に裾野を広げ、双耳峰の頂きは鋭く天を衝いている。
俎ー直下の雪の縦縞模様が印象的だった。
燵ケ岳の右後方には上州の武尊山が見える。こちらは雪の横縞模様になっている。


 
尾瀬の至仏山。
左端の鳩待峠から小至仏山を経て登りました。


その右には谷川連峰などの上越国境の山々。詳細は不明です。


 西側を向くと只見川を隔てて平ケ岳が大らかな姿で雄然として横たわっている。
少し斜めから眺めているためか、昨年燵ヶ岳から見たときよりもその頂上部が引き締まって見える。
右奥には巻機山。


 平ヶ岳の右には利根川源流の山々が続き、その果てに越後三山の中ノ岳、駒ヶ岳が仲良く並んでいる。
駒ヶ岳の手前には荒沢岳が鋭い稜線を見せており、その足下に奥只見湖が水面を青く光らせていた。



 
 振り返って東側を眺めると遥か彼方に高原山の峰々。
明神岳、釈迦ヶ岳、西平岳などが逆光で黒い影になっていた。



 
視線を南側に戻すと男体山、女峰山、奥白根山などの日光の山々。


 
 左に女峰山、右に男体山


 
奥白根山遠望


 
 締めくくりは、遠くの赤城山のさらに彼方に白く浮かんだ富士山。
ここから富士山が見えるとは考えもしなかったのではじめは雲かと思った。



山頂からの眺望を楽しんだあと、駒ヶ岳から北に続く中門岳に向かう。
中門岳まではなだらかな起伏の続く、のんびりした雪上の稜線歩きだった



歩くにつれて会越国境の山々が姿を現してくる。
この方面の山には登ったことがないので全く見当がつかない。未丈ヶ岳、毛猛山など
が見えているのかもしれない。
この地方には、ほかに会津朝日岳、浅草岳、守門岳など、高さはそれほどでもないが興味のある山が沢山ある。
機会があれば訪れてみたい。



 
 中門岳から会津駒ヶ岳に戻って行く。


 
気分のいい稜線歩きをして駒ヶ岳に戻ってきたのは7時ごろ。
記念写真を撮ってから荷物をまとめて下山を開始した。
雪の斜面の下りは楽だ。あっという間に地面が見えるところまで来る。
スパッツを取り、服を着替え、急坂を掛け下り、登山口の階段を降りて滝沢橋に着いたのは9時ごろだった。
時間があったので近くの駒の湯に行き汗を流す。すばらしい景色を思う存分眺めることができ、満ち足りた気分だった。
帰りは11時ごろのバスに乗り、会津高原駅から電車で浅草に着いたのは夕方の4時すぎだった。



 
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