夏小屋丸・笹ヶ峰
2019年(平成31年)3月9日


メ モ
昭和47年(1972年)に初版が発行された”秘境・奥美濃の山旅”という本があります。私が持っているのは昭和51年発行の三版ですが、昭和51年というと山歩きを始めて6年ほどで、北や中央アルプスの主要な山は登り終え、南アルプスも聖岳以南を残す状態となっていたころです。そのような時になぜ地味な奥美濃の山に関心を持ったのかは遠い昔のことで全く記憶にありません。
その本の中に笹ヶ峰の紹介記事があり、最初の頁に晩春の笹ヶ峰と題したモノクロの写真が載せてありました。笹に覆われたたおやかな山頂部に雪を残したその写真を見た瞬間から、何とかこの山に登ってみたいという気持ちが湧いてきましたが、人里から遠く離れ、深い藪に覆われたこの山に登る困難さを考えると、とても私の実力では無理とあきらめざるを得ないのでした。
しかし、それから30年近く経った平成17年(2005年)に広野ダムの上流に二ツ屋分水堰が完成したことにより
、私にとってこの山へのアプローチが容易となり、残雪期なら日帰りでも登頂可能ということになったのでした。そして今から4年前の3月に二ッ屋橋から美濃俣丸に登り笹ヶ峰までの縦走を計画したが、その時は残念ながら美濃俣丸の往復のみで終わりました。
その後も春先になると笹ヶ峰登頂の機会を伺ってきたところ、今年になってようやくその時がやってきました。今年は暖冬のため笹ヶ峰への最短ルートの入口である大河内集落跡の奥にある登山口まで積雪はなく、一方稜線にはまだ十分残雪があるという中で、この週末の土曜日は好天気という予報でした。この好機をつかみ、40年来の思いを叶えるべく9日の午前3時に、先週と同じ福井県嶺北地方に向かって車で家を出発しました。

行 程

二ツ屋分水堰
↓↑
笹ヶ峰登山口
↓↑
展望台地
↓↑
ロボットピーク
↓↑
夏小屋丸
↓↑
笹ヶ峰

距離     : 23..8km
最大標高差: 934m
累積標高  :1,245m




天 候

快晴

 
 
(日本気象協会tenki.jp : 過去天気)

山行記録

午前5時20分に二ツ屋分水堰に着きました。他に車はなし。
先週の銀杏峯と違ってあまり一般的な山ではありません。


休憩と朝食を済ませてから午前6時30分に出発します。
分水堰から先にも車で入れそうだが、万が一のことを考えて徒歩で行きます。


駐車地から10分ほど歩いて行くと後ろから車がやってきたので、
道の脇に寄ってやり過ごそうとしていると私のところで止まり、よかったら乗っていきませんかと誘われた。
岐阜から来られた三人の登山者で、その親切さに感心し、お言葉に甘えて同乗させていただきました。
登山口までの道は部分的に水たまりや路肩の弱そうなところもあり、私としては車で入らなくてよかったと思っている。
登山口には予定より早く午前7時前に到着しました。
これから支度をするという三人にお礼を言って別れていよいよ山道に入って行きました。
ところが、初めてのところで不案内なこともあり車道をそのまま進んで行ってしまって途中で気がつき戻って来ると、
今度は”かんじき”のひもが緩んで途中のどこかに落としてきたのに気がつきました。
このように車道を行ったり来たりで30分ほど時間をロスし、
結局登山口を出発したのは午前7時30分ごろになってしまいました。


日野川に簡単な木の橋が架けられているのが見えます。
道標の矢印の方ばかり気にしていたのが間違っていました。もっと視野を広く持たないとダメです。
車道から下って橋を渡って行きます。


時間をロスしたため、樹林帯に入ったところで後ろからやってきた三人パーティに追いつかれてしまった。
いずれは追い越されることになるので、そこで三人をやり過ごしてからゆっくりと樹林の中を登って行く。
踏み跡は落ち葉に覆われて見えないが、道筋は何となくわかります。
木々の幹の肌が露出しているのは鹿のせいだろうか。痛々しいです。


木々に巻かれた白いテープに導かれながら沢沿いに緩く登って行くうちに沢と別れてやや左手に巻いて行くようになり、
やがて前方の尾根に向かって道なき道を急登する。
落ち葉で足元が不安定になるので3点支持を心がけながら慎重に行きます。


午前8時20分に尾根に乗りました。
道の間違いによるロス感や睡眠不足のこともあり、ここまで気分がすぐれずに休み休み来たので時間がかかってしまった。


しかし尾根に乗るとまわりが急に明るくなり、木々を透かして視界も開けて来て気持ちも何とか持ち直してきました。
ここからほぼ一直線に越美国境稜線に向います。


新雪に覆われた尾根を登って行きます。結構な急登です。


30分ほど尾根を登って行くと左手に目指す笹ヶ峰が見えてきました。
まだ日が差さない西斜面は積雪量が少ないようです。


先の見えない尾根道を登ること1時間余り。傾斜も緩んでようやく急登も一段落の感じがしてきました。
新雪の中に先行者の踏み跡が続きます。


午前9時40分に広い雪原に出ました。
この雪原には明確なピークはないが、標高1050mを越える見晴らしの良い台地でした。
以下では展望台地と呼びます。


 
振り返れば鋭い頂きの日野山とその左に武生方面の眺め。
左手前にはこの台地のシンボルのような木。


向かう正面にはロボットピーク(右)と夏小屋丸(左)。


左手には目指す笹ヶ峰とP1169。


右手中央には緩やかな尾根を延ばす上谷山。その麓には広野ダム湖も見えています。
左には美濃俣丸や三周ヶ岳の白い頂き。


 
目も覚める素晴らしい眺めに元気づけられて先に進みます。
ロポットピークまでの標高差200mの登りです。


 
展望台地を振り返る。その背後には日野山。
この先、凍てついた急登があるかもしれないので47年前から使っている8本爪のアイゼンを装着しました。


展望台地から緩急織り交ぜた登りを続けること1時間ほどでようやくロボットピーク直下まで来ました。
ロボットピークには帰途立ち寄ることにして、まずは笹ヶ峰に向かいます。


 
ロボットピークの斜面を巻いて越美国境稜線に向います。
夏小屋丸と笹ヶ峰が並んで見えます。40年越しの登頂の実現までもう少し。


まずは夏小屋丸の手前の小ピークに登ります。
稜線に立つと東側から冷たい風が吹きつけてくる。


踏み跡を辿って頂上へ。


 
午前11時10分に小ピークの頂上。頂上に立つと風はピタリと止む。
北に能郷白山が見えます。


大河内山方面を振り返ります。
遠くに美濃俣丸や三周ヶ岳。


 
小ピークから夏小屋丸に向かいます。


 
鞍部付近からの夏小屋丸。
一際白い頂きです。


 
夏小屋丸の頂上に近づきました。
このあたりが一番雪の量が多そうで大きな雪庇ができています。
右奥に笹ヶ峰が見えます。


 
白山も見えています。
手前には金草岳から冠山、若丸山を経て能郷白山までの奥美濃の山並み。
金草岳の手前には釈迦嶺。


 
白山を拡大。
白山の左手前には先週登った銀杏峯と部子山。
手前正面に釈迦嶺。


能郷白山を拡大。
奥美濃の盟主にふさわしい堂々とした山容です。
左奥にはうっすらと乗鞍岳。


夏小屋丸に登って行きます。


午前11時25分に夏小屋丸山頂に着く。
山頂からの白山と能郷白山の眺め。先ほどとほぼ同じです。


振り返ればロボットピークから左に大河内山や美濃俣丸。
中央奥に三周ヶ岳。



 
夏小屋丸を越えて笹ヶ峰へ。
途中にはもう一つ小ピークがあります。


 
夏小屋丸を振り返る。
夏小屋丸は標高が1294mあり、美濃俣丸から笹ヶ峰にかけての広義での笹ヶ峰一帯ではもっとも高い山です。
また、その眺めは東西からよりも南北の稜線上からの方がよく、ボリューム感がある立派な山容をしています。


 
次のピークとの鞍部付近。
鞍部は風の通り道となっているようでここも冷たい風が吹き抜けている。


 
このピーク近くの稜線の東側には大きなクレパスがありました。


 
小ピークからの笹ヶ峰。
とうとうやってきました。あと一登りです。


 
小ピークから下り、鞍部から登り返して行きます。


 
先ほどまでいた小ピークを振り返ります。
このあたりの雪の量も多いです。


 
登りついたところは南のピーク。
最高点はこの先のピークです。


2019年3月9日午前11時50分。ついに笹ヶ峰に辿り着きました。
少し大袈裟ですが、万感の思いを込めてまわりを眺め渡します。


奥美濃の稜線は笹ヶ峰の北のピークから高倉峠(見えていない)を経て金草岳へ。
遠くの白い山並みは越前大日山。


金草岳から先は冠山、若丸山を経て能郷白山へ。
遠くに越前大日山や部子山、銀杏峯、白山。手前に釈迦嶺。


東から南東にかけては支脈上の千回沢山や不動山。
遠くに雷倉、花房山、小津権現山や蕎麦粒山なども見えます。


辿ってきた南には夏小屋丸、ロボットピークなど。
左遠くには奥美濃の殿あるいは出発点の伊吹山も。


ロボットピークから続く登ってきた白い尾根。
その向こう遠くに上谷山。


最後に白山と・・・、


能郷白山と・・・、


 
 伊吹山です。


 
素晴らしい眺めを満喫したあと、腹ごしらえをして少し休憩してから、
午前12時20分に下山開始です。


 
南のピークから下って行きます。


 
 笹ヶ峰を振り返る。


 
 夏小屋丸に登り返します。


 
強風で巻き上がる雪煙。


 
夏小屋丸から笹ヶ峰を振り返ります。


 
夏小屋丸から下る途中からのロボットピーク。


 
夏小屋丸の雪庇と笹ヶ峰。


 
 小ピークからロボットピークに向かいます。


 
往路では省略したロボットピークに登ります。
風が強い。


 
午後1時10分にロボットピーク着。見た目めほど広い山頂ではなかった。
最後の展望を開始です。


北には登ってきた夏小屋丸と笹ヶ峰。
遠くに加賀の白山と能郷白山。


南には大河内山から美濃俣丸、三周ヶ岳へと主稜線が続く。


 
午後1時20分に名残りを惜しみながら登ってきた尾根を下り始めます。


 
展望台地目指してドンドン下ります。
雪の下りは膝への負担も少なく楽です。


 
夏小屋丸と笹ヶ峰を見ながら下って行きます。


 
稜線上ではアイゼンでもそれほど潜り込むことはなかったが、
午後になって雪が緩んできたため、下りでは少し踏み抜くことが多くなりました。


 
ロボットピークと夏小屋丸を振り返る。


 
朝は快適だった展望台地も雪が緩んで少し歩きにくい。
踏み跡は避けて行った方がよいようです。


 
シンボルツリー?


よくもこんなに登って来たなあと思うほど下り続けて行きます。


午後3時。標高750mあたりで雪が切れて来たのでアイゼンをはずして少し休憩しました。


そのあとはひたすら尾根道を下って行きます。


午後3時10分に尾根から外れて急斜面を下って行く。


白いテープを見失わないように下り続けてようやく日野川が見えてきました。


木橋で日野川を渡ります。落ちないように慎重に。


 
午後3時35分に登山口に戻ってきました。
まだ1時間ほどの林道歩きはあるものの危険地帯は過ぎ去ってホッと一息します。


 
大河内集落跡を振り返る。


 
源平谷山への入口にある鳥居。


 
並木道


 
大河内大橋まで戻ってきました。


 
午後4時40分に二ツ屋分水堰に無事帰りつきました。


 
帰途、広野ダムから笹ヶ峰方面を見る。
右に美濃俣丸、左にロボットピークと夏小屋丸。もともとはこれらの山々を総称して笹ヶ峰と呼んだらしい。
いづれにしても、好天気の下、積年の思いを無事果たすことができたことに感謝するのでした。
往路を戻って帰宅は午後8時だった。



コースタイム
往  二ツ屋分水堰(6:30)−笹ヶ峰登山口(7:30)−展望台地(9:55)−主稜線(11:05)−夏小屋丸(11:25)
   −笹ヶ峰(11:50)
復  笹ヶ峰(12:20)−夏小屋丸(12:50)−ロボットピーク(13:10-13:20)−展望台地(14:00)−笹ヶ峰登山口(15:35)
   −二ツ屋分水堰(16:45)

 |ホーム地域別山行一覧年別山行一覧