念丈岳
2015年(平成27年)5月2日


メ モ
北は茶臼山から南の越百山まで2千5百メートルを越す峰々が連なる中央アルプスこと木曽山脈も、それ以南は徐々に高度を落として、奥念丈岳、安平路山、摺古木山などの樹林に覆われた山並みとなってしまいます。そうした中にあって、主稜線から少し離れた位置にある念丈岳は木曽山脈におけるハイマツの南限地帯であることや、その山頂から雄大な展望が得られることなど、中ア最南部では特筆すべき山です。
この山に直接登るルートとしては、松川町の鳩打峠から烏帽子岳を越えて行く道と高森町から大島山を越えて行く道の2本あるが、いずれも長距離の尾根歩きが必要となります。特にまだ稜線に雪の残る時期では日帰りは難しく、そのため登る人は限られていて、人出で賑わうGWでも静かな山歩きが出来るところに違いないと考えました。
と言うことで、今年のGWはこの念丈岳に日帰りで登ることにしたが、残雪の状態によっては無理かも知れないので、その時は途中の池ノ平山まででも、と考えて山行計画を立てた。ルートは上記2本のうち、途中の烏帽子岳までよく整備されている鳩打峠からの道を行くことにした。また、翌日は同じ木曽山脈の中で近くにある南木曽岳に登ることにした。
5月1日の午後9時半に枚方の家を出発。交野北ICから高速に入り、中央道の松川ICで高速を下りて登山口に向かう。GWの初日だが深夜なので混むこともなく順調に走って鳩打峠の駐車場に着いたのは2日の午前0時50分だった。走行距離は286km。駐車場には他に車はなし。夜明けまで仮眠をとる。
少し微睡んだ気がして目を開けるとまわりは薄明るくなっている。時計を見ると4時半を回っていた。今日は長丁場なので遅くとも5時には出発の予定なので、眠気と戦って起き出し、支度をして5時過ぎに駐車場を出発した。まだ早朝だからなのか相変わらず駐車場には他に車は見られなかった。


行 程


鳩打峠

小八郎岳

烏帽子岳

池ノ平山

念丈岳

池ノ平山

烏帽子岳

鳩打峠


距離     : 18.2km
最大標高差:1,209m
累積標高  :1,432m
 





天 候

快晴
 (日本気象協会tenki.jp : 過去天気)

山行記録

 
日の出前の午前5時5分に駐車場を出発。
後ろには南アルプスの仙丈ヶ岳と北岳のシルエット。


 
 車道を少し行くと鳩打峠。標高は1118m、烏帽子ヶ岳まで3時間と書かれている。


 
新登山口の案内板(旧登山口が何処かは分かりませんが・・・)。
これによると烏帽子岳まで4時間となっている。先ほどとは1時間の差があるが私の場合はこちらだろう。
念丈岳まで登り6.5時間、下りは4.5時間で合計11時間。当然雪なし休憩なしのもの。
雪の状態によってはやはり日帰りは無理か?


 
行けるところまで行こうと考えて登山道に足を踏み入れる。
始めは樹林の中の緩やかな登り。折から朝日が差し込んできた。


 
 やがてつづら折りの登りとなり高度を上げて行く。峠から30分ほどで巻き道との分岐点に着く。
天気も良いし展望を期待して右の小八郎岳への道を行く。


 
 小八郎岳に向かう緩い登り。このあたりは季節にはササユリが咲くらしいが、
準絶滅危惧種になっており採取は禁止されている。


 
 分岐から20分ほどで小八郎岳直下に着く。


 
午前6時5分に標高1470mの小八郎岳に到着。視界が一気に開ける。


 
 これから向かう烏帽子岳がよく見える。右には雪を残した中央アルプスも。
右端に片桐小八郎之霊と書かれた石碑がある。
小八郎は源平争乱時の源氏方の武将で、ここに城を築いたとのことです。


 
 烏帽子岳から池ノ平山を経て念丈岳へと続く稜線。
念丈岳は中央左寄りの台形のピーク。左の山は高森ルート上の大島山。


 東には南アルプスが一望出来ました。仙丈ヶ岳から聖岳までの3千メートル峰が並ぶ。


 
 小八郎岳で10分ほど休憩してから先に進む。


 
 10分ほどで巻き道と合流する。ここは烏帽子岳までの3合目。


 
カラマツ林の中の緩い登りが続く。


 
道端のヤシオツツジも満開。


4合目付近の道。カラマツとササの組み合わせが延々と続く。


午前7時20分。標高も1700mを越えて烏帽子岳もだいぶ近づいてきた。
飯島道との分岐まであと100mほどの登り。


 
 分岐まであと少し。


 
 午前7時45分、飯島道との分岐(P1849)に到着。ここで10分ほど休憩する。
ここから烏帽子岳までの標高差は約350mで1時間ほどかかりそう。
到着は9時を回り、やはり峠から4時間を要することとなりそうだった。


 
P1849で休憩して少しは疲れも取れたところで烏帽子岳目指して出発する。
少し下って、そのあとは狭い尾根道を歩いて行く。


そのあと緩く登って行くとほどなくセキナギに着く。
稜線直下まで崩壊が進んでいる。やがては稜線が削り取られてしまいそう。そうなると登山道は?


 
セキナギを過ぎると急登が始まる。
このあたりから烏帽子岳までの間がこのルートで最も厳しいところだろう。


 
岩と根っこの道の急登。ペースを崩さずにゆっくりと登る。


 
途中で残雪も見えてきたが思ったよりも少ない。
ところどころ道を覆っているところもあったが、全体としては夏道を辿って登って行くことができた。


 
標高も2100mを越えて頭上に烏帽子岩が見えてきた。あともう一登り。


 
 烏帽子岩を巻いて、頂上直下の鎖やロープが張られた崖のような道を登って行く。


 
 そこを登り詰めると頂上はすぐのところだった。


 
 午前9時15分に今日の第二番目のピークである烏帽子岳に到着。


 
烏帽子岳からの遮るもののない360度の展望。
北には越百山から仙涯嶺、南駒ヶ岳、赤梛岳、空木岳にかけての中央アルプス南部の白銀の峰々。


西にはこれから向かう池ノ平山から念丈岳。
念丈岳の左遠くに安平路山が見える。


念丈岳(右)と安平路山を拡大


振り返れば伊那谷を隔てて、鋸岳から遙か南の池口岳にかけての南アルプスの山々。


南アルプスの左には八ヶ岳と蓼科山。


山頂で20分ほど休んでから次の目的地の池ノ平山に向かう。
これから先は雪の状態次第となるが、山頂から見たところはそれほど多くなさそうだった。
いずれにしても稜線を忠実に辿って行けば何とかなるだろう。


烏帽子岳から一旦下り、雪の残る樹林の中の岩の尾根を登ったりへつったりしながら10分弱で次の小さなピークに到着。
ここも眺めの良いところだった。


その後は明瞭な道を辿って稜線を行く。
ところどころ残雪もあったが大したことはなく、これなら念丈岳まで行ける可能性大と思った。


 
なかなか雰囲気のよい道。
時刻は10時を回ったところだった。帰りのことも考えて12時頃を引き返す目途とした。


池ノ平山に近づくと残雪が増えてきた。傾斜も緩く適度に締まっていて歩きやすい。


行く手に空が見えてくると山頂も近い。


 
 午前10時25分に池ノ平山に到着。本日第三番目のピーク。
一面の雪原を想像していたが、半分ほどは笹原が現れていた。


 
 池ノ平山は標高2327mで本日の行程の中では最も標高が高いところです。


 
池ノ平山は広々としていていい雰囲気のところだったが、広闊な展望がないのが玉に瑕です。
ここで腹拵えをして10分ほど休憩。


 
午前10時35分、最終目的地の念丈岳に向かう。
池ノ平山から下る途中で正面に目指す念丈岳を見る。その後ろには安平路山が控えている。


 
念丈岳(手前)と安平路山。


 
少し下って行くと右手に越百山と仙涯嶺が見えた。


 
池ノ平山から下る途中で念丈岳を見る。
その後ろに安平路山から奥念丈岳まで中央アルプス最南部の稜線が続く。
念丈岳から右に稜線を辿ると奥念丈岳に達する。


 
鞍部付近からの念丈岳。
稜線の道は思っていたよりも明瞭で迷うことはない。


 
P2243からの念丈岳。
池ノ平山から先の道は灌木帯となっていて見通しが利き眺めはよい。


 
稜線上はところどころ残雪があり一部では夏道を覆っていたが、特に問題となるようなところはなかった。


 
P2243と次の小ピークとの鞍部から振り返る。左手前にP2243、右奥に池ノ平山。


 
小ピークとの鞍部から念丈岳を見る。
時刻は11時40分。なんとか12時には着きそうだ。


鞍部から見た中央アルプス主稜線。
手前の奥念丈岳から徐々に高度を上げて行き、越百山、仙涯嶺、南駒ヶ岳へと続く。


 
念丈岳直下の残雪。
途中で夏道のある右手の樹林の中に入って行く。


 
 最後の急登を終えて着いたところは主稜線への分岐点。


 
 右のハイマツの中に踏み跡があり奥念丈岳まで行けるようだが、ここからは道のようなものは見えない。


 
稜線に残った雪を踏んで山頂へ。


 
午後0時ちょっと前にようやく念丈岳に到着した。峠を出発して7時間弱、長い長い道程だった。


 
念丈岳山頂。後ろは南アルプス。
過去の日帰り山行では平ヶ岳や笈ヶ岳、毛勝山、平家岳、暑寒別岳に匹敵するものだったが
きつい登り返しがなかったためもあってか疲労感はそれほどなかった。
何はともあれ、暫しの休憩の後山岳展望を開始。


 
山頂の三角点と中央アルプス


中央アルプス主稜線。先ほど鞍部で見たものと大きくは違わない。


 
南駒ヶ岳方面をアップ。


 
さらにアップ。中央に南駒ヶ岳、右に鋭い仙涯嶺。


 
奥念丈岳の彼方に御嶽山。


中央アルプス最南部の山々


振り返って池ノ平山


 
池ノ平山の右に烏帽子岳と烏帽子岩。またあそこを越えて帰らなければならない。


東正面には南アルプスの大観。
正午を過ぎて少し霞んできていますがまずまずの眺めです。
それにしても今年は雪が少ない。4月の雨で溶けてしまったのだろうか。


 
鋸岳、甲斐駒ヶ岳、仙丈ヶ岳


 
北岳、間ノ岳、農鳥岳


 
塩見岳


 
悪沢岳・荒川岳、赤石岳、聖岳


 
さらに拡大して悪沢岳と荒川岳


 
赤石岳


 
聖岳


 
光岳方面


 
貸し切り状態の山頂で30分を過ごしてから午後0時半に帰途に就く。
もっとゆっくりしたかったが残された時間は少ないので後ろ髪を引かれるようにして山頂を辞し、池ノ平山に向かって下り始めた。


 
 立ち枯れの木々の間を抜けてP2243に登り返す。


 
池ノ平山に登り返す。疲れも出て来てしんどいです。


 
 午後1時45分に池ノ平山に戻る。
残雪の上には複数の足跡があった。恐らくここで引き返した人たちがいたのだろう。


 
戻ってきた池ノ平山で一息入れる。
疲れたときの休憩ほど気分のよいものはなくいつまでも休んでいたかった。
しかしすでに時刻は午後2時に近い。まだまだ先は長くゆっくりともしていられない。


 
烏帽子岳への稜線を行く。


 
午後2時25分に烏帽子岳の手前のピークに戻る。
今日は天気が安定していてまだ南アルプスもよく見える。


 
 午後2時35分に烏帽子岳に到着。


 
池ノ平山と念丈岳を振り返る。


 
見飽きるほど眺めた中央アルプス。
休む間もなく往路では割愛した烏帽子岩に向かう。


 
午後2時45分に烏帽子岩に登る。


ここからの眺めの白眉は伊那谷を隔てた南アルプス。
小八郎岳、烏帽子岳、念丈岳、そしてこの烏帽子岩から、今日4度目の眺めです。


 
くどいですが、鋸岳、甲斐駒ヶ岳、仙丈ヶ岳です。


 
白峰三山


 
孤高の山、塩見岳


 
悪沢から聖までの南ア南部の巨峰群。


 
眼下にはこれから辿る尾根道。斜面が白く見えるところはセキナギかな。
中央右寄りに小八郎山も見える。午後3時に下山を再開する。


 
 烏帽子岩からの急な道を下って行きます。


 
 ドンドン下ります。


 
セキナギを見下ろす。順光となって朝よりも迫力があります。


 
午後3時50分に飯島道分岐に着く。ここで最後の休憩を取り午後4時発。


 
 緩い坂道を坦々と下って行く。


 
午後の光に映えるヤシオツツジを愛でながら・・・。


 
午後4時45分に小八郎岳分岐を通過。帰りは右の巻き道を下って行く。


 
午後5時25分に峠に戻る。往復12時間15分の長い道程でした。
まずはこうして無事戻ってくることができたことに感謝。
また思いの外雪が少なくて計画通り念丈岳まで行くことができ、期待どおりの眺めを得られたのは幸運だった。


 
 駐車場には相変わらず他に車はなし。
池ノ平山や烏帽子岳までの登山者はいたと思うが、結局今日は道中誰にも会わなかった。
着替えをしてから午後5時50分に峠を発ち飯田に向かった。



コースタイム
往  鳩打峠(5:10)−小八郎岳(6:05-6:15)−飯島道分岐(7:45-7:55)−烏帽子岳(9:15-9:35)
   −池ノ平山(10:25-10:35)−念丈岳(12:00)
復  念丈岳(12:30)−池ノ平山(13:45-14:00)−烏帽子岩(14:45-14:55)−飯島道分岐(15:50-16:00)
   −小八郎岳分岐(16:45)−鳩打峠(17:25)

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