美濃俣丸
2015年(平成27年)3月26日


メ モ
長大な両白山地のうち、南半分の平家岳から金糞岳に至る山々は一般に越美山地と言われているが、私にとっては奥美濃の山という呼び方がしっくりします。もちろんアプローチは滋賀や福井県側にもあるので、奥美濃という言い方はこの山域の一面のみを捉えたものということは承知の上のことですが。
その奥美濃の山々の中には登山道がない藪山も多く、その山頂を極めるには藪と戦いながら登るか、積雪期にラッセルを覚悟して登るかしかありません。このような中で、厳冬期が過ぎ、春の日差しが日に日に増してくる3月から4月にかけては、天候と雪の状態次第では年間を通じて最も容易に登ることが出来る可能性がある時期です。
近くに有名な夜叉ヶ池があることで知られる奥美濃の三周ヶ岳の北には美濃俣丸から笹ヶ峰にかけてのたおやかな稜線が続きます。この山域には登山道はありませんが、残雪期の稜線の様子はなかなか素晴らしく、かねがね一度は歩いてみたいと思っていたところでした。
そこで、お彼岸も過ぎたこの週の後半は晴天が続き気温も上がるとの予報を基に、26日の早朝に福井県の今庄から広野ダムに入り、二ツ屋分水堰から美濃俣丸を経て笹ヶ峰を目指すという計画を立てた。今年は例年になく雪が多いようで果たして何処まで行けるのかは断定できなかったが、せめて美濃俣丸まででもと思って一とおりの支度を整えて午前2時20分に車で家を出発した。
第二京阪から京滋BP、名神経由で北陸道を走り、今庄ICで高速を出て国道365号、県道231号を走って広野ダムには4時30分頃に着いた。さらにダム湖の右岸を進んで行くと二ツ屋橋地点で2台の除雪車が道を塞いでいた。除雪されているのはここまでのようなので、その手前に車を止めることにした。時刻は4時50分であたりは未だ暗い。車から出て空を見上げると満天の星でさそり座の特徴的な形も認められた。一安心して支度を始め、朝食を取ってから、ようやく明るくなってきた5時35分にGPSをスタートさせて登山を開始した。

行 程

二ツ屋橋
↓↑
二ツ屋分水堰
↓↑
尾根取付
↓↑
P912
↓↑
P1115
↓↑
美濃俣丸

距離     : 13.2km
最大標高差: 974m
累積標高  : 974m
  
天 候

快晴
 (日本気象協会tenki.jp : 過去天気) 

山行記録

 
二ツ屋橋付近の状況。
除雪は進んでいるようだったが、ここから先はまだ作業中で車は入れなかった。
支度をして5時35分に出発。

 
除雪中の車道。あと少しで開通できる様子です。

 
車道を15分ほど歩いて二ツ屋分水堰に到着。
このあたりは春はまだ浅く、早朝の冷気が体を包み込んできた。

 
堰堤の上を進んで行きます。

 
除雪が始まっている道を5分ほど歩いて鈴谷橋を渡る。ここから先は未舗装の道となる。
鈴谷橋を渡って右に折れてしばらく行くと道は左にUターンして雪に覆われてくる。
このあたりで後から来た人に追い越された。

 
今日は入山者はいないだろうと思っていたので少し驚いた。
その後少しで道は右にUターンし、しばらく行くとまた左に大きく曲がる。
右手には道が分岐して沢を渡っている。

 
左手には藪に覆われた石仏のようなものがあった。

 
雪に覆われた道は高度を上げながら続く。
途中で先行者の踏み跡は私の予定のルートから外れていった。
近道があるのかも知れないが、私は予定どおりの道を進んで行く。

 
昨日あたり降雪があったようで、踏み跡も定かでない道を歩いて行くとやがて道は右に大きくカーブして行く。
その曲がり角が登山ルートとなっている尾根への取り付き点と思われたが目印は何もない。
GPSで確認して間違いがないことを確かめてから6時半に樹林の中に入って行く。

 
はじめは幽かな踏み跡があったが、やがて雪や藪に覆われて分からなくなってしまった。
しかし頭上には稜線が見えているので、それを目指してまわりの木に掴まりながら激登して行く。

 
激登すること10分ほどでどうにか尾根の稜線に辿り着いた。あとはこの尾根を辿って登り続けるのみだ。
GPSで確認すると、辿り着いた尾根の標高は500mほどで、1254mの美濃俣丸山頂までは750mの標高差がある。

 
尾根上の雪の中には幽かな踏み跡も認められた。
そこそこの傾斜の尾根を登って行く。途中で木に赤いテープが巻かれてあるのを見ると少し安心します。

 
700mを越えたあたりで尾根にも朝日が差すようになってきた。
ふと右手を見るとかんじきの踏み跡があった。多分先ほどの先行者のものだろう。
ショートカットしてこのあたりで合流してきたものと思われた。

 
雪原に映る樹林の影。なかなかいい感じです。

 
雪の尾根を登り続けること1時間半ほどで、8時5分にP912に到着。
二ツ屋橋から2時間半かかったことになり、予定よりかなり遅れた。

P912からは左手に笹ヶ峰へと続く稜線がよく見えた。
このP912から先はまわりの景色を楽しみながら歩くことができる。
長い樹林帯の登りのあとなので気分も高揚する。


左手遠くには笹ヶ峰。
今日の調子では美濃俣丸着は早くて9時半ごろになりそうで、笹ヶ峰まで行くのは無理なようです。


 
笹ヶ峰の右にはロボット雨量計ピーク。
その左に見えるのは夏小屋丸のピークだろうか。

行く手には美濃俣丸。まだまだ遠そう。

 
美濃俣丸と右手前にP1115。
ここから山頂までの標高差は350mほどだが、疲れてきた体には威圧感がひしひしと伝わってくる。

 
美濃俣丸の右手には三周ヶ岳。
1200m程度の山とは思えない山容です。

 
振り返れば広野ダムの青い湖面が・・・。

 
P912からP1115までの間は小さな起伏が続き結構長い距離がある。
途中には痩せ尾根もあり、それほど危険ではないが気は抜けない。

 
P1115への道から振り返り見た眺め。
先行者の踏み跡のおかげで歩くのは少し楽になっているが、
それでも新雪のフカフカ雪に足を取られて土の上を歩くようには行かない。

 
P1115への斜面はところどころ凍り付いているところもあったのでアイゼンを付けて登って行った。

P1115直下から辿ってきた方向を振り返る。
左に広野ダム湖、中央右寄りにP912が見える。

右手には三周ヶ岳。

9時25分にP1115に到着。
美濃俣丸も大分近づいた。あと30分くらいだろうか。

右手には三周ヶ岳、その左には黒壁山が見える。

鞍部から美濃俣丸を見る。あと一登りだ。

途中のこぶを右に巻いてフカフカ雪の斜面を登って行く。
山頂近くになるとクラストしているところが多くなりアイゼンを利かして登る。

もうすぐ山頂。

10時ちょうどに美濃俣丸山頂に着く。
誰もいない山頂は思いの外広く、360度の景色を眺めながら至福のひとときを過ごした。

笹ヶ峰へと続く稜線。
左手前の丸い頂から右に大河内山、その左先にロボット雨量計ピーク、その奥に笹ヶ峰。
今日は時間的に無理だが、いつかきっとあの稜線を歩いて笹ヶ峰に行こう。

大河内山の右遠くには能郷白山方面の山々。

東には不動山や烏帽子山。右に黒壁山。
遠くには伊吹山も見える。

南には黒壁山と三周ヶ岳。
1200m程度の山々とは思えない眺めです。

 
元に戻ってロボット雨量計ピーク。
その後ろに夏小屋丸と笹ヶ峰。

 
ロボット雨量計ピークと大河内山との間の稜線の彼方に霊峰白山。

 
能郷白山。

 
幽かに伊吹山。

 
 三周ヶ岳の白い稜線。

 
山頂にはこのような雪庇も。

 
山頂で40分ほど過ごし、雄大な眺めを堪能してから下山の途につく。

 
 遙か彼方の広野ダム湖を目指して。
手前の白いピークはP1115。その先右手にP912。

 
 下る途中で能郷白山を振り返る。

 
美濃俣丸からの下り。
P1115の先に広野ダム湖。右にP912。

 
鞍部からP1115を登る。
鞍部付近で笹ヶ峰まで縦走するという二人連れの登山者とすれ違う。担いでいる荷物が重そうだった。
今日出会ったのは3名のみ。

 
P1115山頂の雪庇。

 
美濃俣丸を振り返る。先ほどの二人が登っている。

 
P1115着11時5分。
山頂からP912と広野ダム湖を見る。

 
P912への道からP1115と美濃俣丸を振り返る。

 
雪の稜線を戻って行く。

 
P912目指して行く。
昼近くになり好天気と言うこともあって雪も緩んできて歩きにくい。

 
山頂から1時間で11時45分にP912に戻る。
P912から振り返り見た美濃俣丸。予想以上の素晴らしい眺めが得られた山頂だった。

 
あとは樹林の中をひたすら下るだけ。

 
下る途中でどうも雰囲気が違うと思ってGPSを見てみると、
登ってきた道を外れてどうやらショートカットの踏み跡を辿って下ってしまったようだった。
軌道修正も面倒なのでそのまま下って行った。やがて前方に林道が見えてきた。

 
12時40分に林道に飛び出す。
ここは今朝尾根に取り付いたカーブ地点よりも少し上の方で、
この道に沿って下って行けば何の問題もなく今日の山歩きは終わっていたはずだった。

 
しかし、林道を横切って真っ直ぐ続く踏み跡を辿って行くうちに雪はなくなり踏み跡も分からなくなってしまった。
このまま真っ直ぐ行けば林道に出ることは間違いなかったので残雪のある急斜面を強行突破し、
木の枝を掴みながら写真の崖をズリ下りて何とか林道に下り立った。

 
幸い怪我はなかったが、下手をすると大事になったかも知れない状態だった。
遠回りになってもやはり予定のルートを歩くべきで、年甲斐もなく少し無理をしたかなと反省しながら林道を下って行った。

 
二ツ屋分水堰には午後1時35分に戻る。

 
二ツ屋分水堰から二ツ屋橋の間の雪は跡形もなく除雪されていた。
午後1時50分に二ツ屋橋に戻る。
新雪が積もっていたこともあり予定以上の時間がかかって笹ヶ峰まで行くことはできなかったのは心残りだが、
好天気に恵まれて奥美濃の素晴らしい景色を眺めることができ、無事戻ってくることができたのはなによりだった。

 
二ツ屋橋からは遠くに美濃俣丸の白い頂が望まれた。

 
帰途、広野ダムから美濃俣丸を眺める。
このあと往路を戻って家に着いたのは午後5時過ぎだった。


コースタイム
往 二ツ屋橋(5:35)−二ツ屋分水堰(5:50)−尾根取付(6:30)−P912(8:05-8:10)−P1115(9:25-9:30)
  −美濃俣丸(10:00)
復 美濃俣丸(10:45)−P1115(11:05)−P912(11:45-11:50)−林道出会(12:40)−二ツ屋分水堰(13:35)
  −二ツ屋橋(13:50)

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