焼石岳
2011年(平成23年)6月16日

メ モ
6月第3週の晴れた日に東北の焼石岳へ行くことは永年に亘る願いだった。大阪から東北までは遥かに遠く、少なからぬ時間と費用をかけて行く限りは晴天の確率が100%でないと実行に移す決断ができなかった。しかし6月は梅雨の季節であり、都合よく天気や時間に恵まれる機会は残念ながらこれまでやってこなかった。
今年の近畿地方の梅雨入りは例年より10日ほども早く今年もだめかなと諦めていたが、東北地方はまだしばらく梅雨入りする気配はなく、さらに天気予報によると東京出張の次の16日は岩手県内陸部は晴れとのことだった。念のため出張当日の朝の予報を見て晴天が間違いないことを確認してから背広姿でリュックを担いで家を出たのだった。
15日の夕方、東京での用事を終えて新幹線に乗り仙台に向かう。関東地方は曇り空で、磨りガラス越しに太陽を見るようなはっきりしない空模様だった。本当に天気は大丈夫だろうかと気になったが、福島県に入り新白河に近づく頃から青空が覗き始め、沈み始めた日の光も鋭さをもってきた。宵闇の仙台に
着くと早速東口のレンタカーの営業所に行き、手続きをして午後7時半頃に水沢目指して出発した。途中で夕食と買い出しをしながら国道4号を北に向かう。
夜の国道を走っているためまわりの様子は分からないが、橋を渡る前に必ず段差注意と書かれてある立て看板を見て震災による地盤沈下がこんな内陸部にまで影響しているのかと、その規模の大きさを実感した。一関を過ぎ水沢で国道397号に入って登山口のつぶ沼を目指す。この国道がまた立派なことに驚く。工事中の胆沢ダムのために道路を付け替えているようだが、やはり某国会議員さんの地元だけはあると感心する。おかげで快適に車を走らせることができ、つぶ沼登山口の駐車場に午後11時25分に到着した。仙台から約150km。
広い駐車場には他に車は見られなかった。車から出て空を見上げると、山の中にもかかわらず満月の明かりのため星はそれほど多くは見えなかったが、それでも頭上の白鳥座の十字星や北の北斗七星、カシオペア座などは認められた。以下は余談だが、この日は部分月食だったらしい。しかし関東以北では月食の前に月が沈んでしまうため見ることはできなかったようです。
駐車場の洗面所で顔を洗って午前零時ごろから車の中で仮眠をとったが、夜は冷え込んであまりよく寝ることはできなかった。3時を過ぎると東の空がほんのりと明るくなってきた。空には雲一つない快晴の朝を迎えようとしている。天気に関しては全く問題はないようだ。3時半頃から起き出して支度をし、早すぎる朝食をとってからすっかり明るくなった4時に念願の焼石岳に向かって出発した。

行 程

つぶ沼
↓↑
金山沢
↓↑
石沼
↓↑
銀明水
↓↑
姥石平
↓↑
焼石岳

距離     : 17.5km
最大標高差:1,111m
累積標高  :1,168m
  
 
天 候

晴れ
(気象庁 : 過去の天気図)

山行記録

午前4時につぶ沼駐車場を出発する。登山届けを見ると最近登っているのは地元の人ばかりのようだった。平日の今日はどれくらいの登山者がいるのだろうか。

駐車場から国道に戻った交差点の向うが登山口だ。

登山口の階段を登ったところから栗駒山が見えた。

駐車場をふりかえる。

早朝の冷たい空気に包まれた樹林の道を行く。登山道の途中には写真のような道標が随所に立ててある。つぶ沼から銀明水までは5.9km、銀明水から山頂まで2.7km、合計片道8.6kmある。結構歩き応えがありそうだ。

登山口から1時間近くのところ。日が差してだいぶ明るくなってきた。

金山沢を渡る。登山口からちょうど1時間。このあたりまでは樹林の中の緩急織り交ぜた登りが続く。あまり変化のない道で我慢のしどころだ。

金山沢から10分ほど登り、ふと頭上を見上げるとサラサドウダンが咲いていた。
浅草岳の鬼ヶ面眺めほどではないにしても、好きな花なので見ることができて嬉しかった。

そこから少しで突然登山道の右側の視界が開け、雲海の彼方に北上山地の山々が望まれた。
左端の一際高い山は早池峰に違いない。

どこが山頂か分からない岳山を越えて少し下ると石沼に着く。
前方には残雪豊かな横岳が見える。

石沼から見た焼石連峰主稜線。
素晴らしい景色を見て、はるばると東北の山にやって来たことを実感する。

焼石連峰北部の天竺山と経塚山。その下には石沼が見える。
体力と時間があれば金明水で1泊して連峰を縦走したいところだ。

石沼から横岳を見る。右の方にこれから辿る雪渓が見える。
横岳は標高1473m。主峰の焼石岳でも1548mだが、この立派な山容はとても1500m級の山とは思えない。
つぶ沼の標高は450m程度なのでその標高差は1100mあり、9km近い歩行距離とあわせて結構きつい登りとなる。

予期していなかった焼石連峰の眺めに満足して瑞々しい新緑の中を行く。

やがて登山道に残雪が見られるようになってきた。

雪の壁を乗り越えて、今は通行止めとなっている中沼からの道と合流して少し行くと、
水芭蕉が群生する湿地帯に出た。

横岳の稜線を仰ぎ見ながら水芭蕉(写真では影の中で見えていませんが)の咲く道を行く。

水芭蕉が咲く道を20分ほど歩いて6時50分にようやく銀明水に着く。ここで小休止。

銀明水は冷たくて美味しかった。金属製の柄杓が少々重たかったですが・・・。

銀明水からは雪渓の登りが続く。

雪渓上には赤い塗料のようなもので道しるべを敷いた跡が残っていた。6月5日に山開きが行われているので、そのときのものかも知れない。

雪渓から登ってきた尾根を振り返る。
中央左手のコンモリした山が岳山だろうか?

北上山地の山々を振り返る。
今は7時過ぎだが早くも雲がかかり始めている。

雪渓を登り終え、木道を行く途中でふと足元を見ると笹に隠れてひっそりとシラネアオイが咲いていた。

5年前の守門岳の時以来久々に見る花だった。

灌木の中の緩やかな道を行く。前方に焼石連峰の主稜線が見えてくるが主峰の焼石岳はまだ現れない。

さらに進んで行くとゴウゴウと水の流れる音が聞こえてきた。こんな高地にこんな豊かな水の流れがあるとは意外だった。横岳からの雪解け水のようだ。
行く手にようやく焼石岳が見えてきた。


焼石岳を見ながら草原を行く。宗教色の強い山なら弥陀ヶ原とでも呼べるようなところだ。
左に横岳、正面に焼石岳を見ながら進んで行く。期待している花々は咲いているだろうか?

焼石岳が大きく近づいてきたころ、道のまわりに待望のハクサンイチゲやチングルマなどが見られるようになる。

8時に花に囲まれた姥石平に到着。
標準タイムより遅れたが、お腹も空いてきたことだし写真撮影を兼ねてここで大休止することにした。


姥石平に咲くハクサンイチゲ。
道の両側には立ち入り禁止のような柵(鉄製の柱だけですが)があるので、
限られたところからしか撮影できなく、なかなか納得のいく構図の写真が撮れない。

姥石平のハクサンイチゲの群落。今日あたりがピークかも。

ハクサンイチゲと焼石岳(姥石平)。ミヤマシオガマも咲いています。

ハクサンイチゲ(姥石平)

イワカガミ(姥石平)

ヒナザクラ(姥石平)

ミヤマキンバイ(姥石平)

ミヤマシオガマ(姥石平)

ムラサキヤシオツツジ(焼石岳山頂付近)

シラネアオイ(焼石岳山頂付近)

姥石平から少しで泉水沼に着く。水面に焼石岳が写る。

沼からは小さな雪田を登る。写真は泉水沼と東焼石岳。

焼石岳へ登る途中から、1511m峰と鳥海山を見る。
1511m峰は結構立派な山容だが名前がついていない。

焼石岳まで最後の急登だ。

頂上が見えてきました。これで今日の登りはお終いです。

山頂に着いたときは秋田の登山道から登ってこられた方が一人いたが、その方が下山したあとは広い山頂を独り占めです。

三角点を使わせていただいて記念撮影。

少し休憩してから山岳展望を始める。
まずは登ってきた姥石平を見下ろす。泉水沼も見える。右は横岳。

南には栗駒山が聳えるが、残念ながら湧き立つ雲に隠れてしまった。

南西にはまだ真っ白な月山が見える。その手前の山並みは神室山地。

西には富士山よりもスマートな鳥海山。

北(左)に残雪の南本内岳、中央に牛形山、東(右)に焼石連峰の主稜線が続く。
南本内岳の彼方には和賀連峰や秋田駒ヶ岳、岩手山などまだ登ったことのない山々が連なっている。
また牛形山と主稜線の間遠くには雲に隠れようとしている早池峰が見える

和賀連峰。ニッコウキスゲの咲く頃に登ってみたい山です。

秋田駒ヶ岳。
和賀連峰とこの山についてはこの写真で合っているのかあまり自信がありません。

ありがたき岩手山。

早池峰。早いものでもう10年前のことになります。

焼石連峰主稜線上の東焼石岳と天竺山。

山頂で45分ほど過ごしてから下山の途につき姥石平で焼石岳を振り返る。
また来る機会があるまで暫しのお別れです。

ハクサンイチゲ(姥石平)

ハクサンイチゲと横岳(姥石平)
帰途、銀明水の避難小屋を見る。銀明水は右手の樹林の中。
下る途中で、昨夕熊に出会った話をしてくれた人や、他の季節にも是非登ってみてと言ってくれた人がいた。みなさん地元の方のようで大変親切な方たちだった。
機会があればまた来ます。そのときは東焼石岳を越えて経塚山まで行ってみたい。

下り一方の下山中、唯一岳山への小さな登りがあった。これを越えればあと登山口まで1時間半ほどだ。今日中に大阪まで帰るため少し急ぎ足で行く。

石沼から横岳方面を振り返る。

天竺山へと続く主稜線。雲が多くなってきた。やはり山登りは午前中が勝負かな。

石沼からほとんど休憩も取らずに下って、午後1時15分につぶ沼に着く。何とか予定の時間に戻ってくることができた。

帰途、工事中の胆沢ロックフィルダムの下流にある“焼石クアパークひめかゆ”に浸かりさっぱりとした気分で仙台に向かった。新幹線を乗り継いで家に着いたのは午後11時だった。
日帰りで少し慌ただしかったが、念願の焼石岳に登り、素晴らしい景色と花々に出会うことができた山行だった。


コースタイム
 往  つぶ沼(4:00)−金山沢(5:00)−石沼(5:40-5:45)−銀明水(6:50-7:00)−姥石平(8:00-8:20)-焼石岳(8:45)
 復  焼石岳(9:30)−姥石平(9:50−10:10)−銀明水(10:55−11:00)−石沼(12:00-12:10)−金山沢(12:35)
     −つぶ沼(13:15)

 |ホーム地域別山行一覧年別山行一覧