鬼ヶ面山・浅草岳
2011年(平成23年)7月6日

メ モ
先月、永年念願の焼石岳に登り、好天に恵まれて残雪と花と展望の山歩きができたが、この時期にはヒメサユリが咲く浅草岳に登るというもう一つの積年の思いがあった。浅草岳には平成17年の6月に初めて登り、シラネアオイやサラサドウダンなどの好みの花々には出会ったが、肝心のヒメサユリの時期には少し早くその可憐な姿を見ることはできなかった。その翌年に守門岳で初めてヒメサユリを見ることができたが、まだ時期は早く、群落と言うにはほど遠い状態だった。そのあと2年前に会津朝日岳に登った帰りにヒメサユリが咲くスキー場のゲレンデを訪れて群生する様子を見たが、やはり自生する自然の姿を見ないことにはなかなか気が収まらないのだった。
そんなわけで今年も6月末から7月始めにかけての会津地方の天気予報に細心の注意を払っていると、雨や曇りの日が続く中で7月6日が好天になりそうな週間予報だった。都合がよいことに前日の5日は東京へ行く予定だったので、この機会を利用して当日リュックを背負い新幹線に乗り込んだ。
浅草岳に登るルートは5本あるが、六十里越から鬼ヶ面山を越えて行くルートがもっとも多くのヒメサユリを期待できそうだった。しかしこのルートは標高差は少ないものの、途中の登り下りが多く、往復9時間以上はかかりそうな強面のルートだった。日帰りで登り、その日のうちに大阪まで帰るためにはできれば午後2時頃までに登山口に戻りたく、そのためには余裕を見て9時頃には浅草岳に到着したい。もし時間がオーバーしそうなら途中で引き返すことも考えなければならなかった。
5日の夕方、上野発16時44分の前橋行き普通電車に乗り、高崎には18時31分に到着。駅から少し歩いてレンタカーの営業所へ行き手続きを済ませて19時頃に出発した。国道17号で魚沼方面へ行くのはこれで4度目ほどで慣れてはいるが、三国峠越えは時間も掛かり疲れも出そうなので、今回は水上から越後湯沢まで関越道を利用した。その後再び17号を走り、小出で252号に入って六十里越トンネル手前の登山口駐車場に着いたのは午後11時45分だった。走行距離は約170km。
車を止めて夜明けまで仮眠をとったが、あまり眠れないうちに3時を過ぎると東の空が白み始めてきた。今日は長丁場になりそうなので、4時前に起きて支度を始めて4時15分に登山口を出発した。

行 程

六十里越
↓↑
電波反射板
↓↑
南岳
↓↑
鬼ヶ面山
↓↑
北岳
↓↑
ムジナ沢カッチ
↓↑
前岳
↓↑
浅草岳

距離     : 13.9km
最大標高差: 839m
累積標高  :1,128m
 
 
天 候

晴れ
(気象庁 : 過去の天気図) 

山行記録

午前4時15分に六十里越登山口駐車場を出発する。
国道を少し戻ると右手に登山口がある。

鬼ヶ面山経由浅草岳への登山口。
登山口から少し急登した後は平坦な巻き道が続き、途中で3ヵ所小さな沢を横切る。
下山途中で水がなくなった後、その沢で飲んだ水はこの上なく美味しかった。


六十里越で会津へ向かう道を右に見送って鬼ヶ面山へ続く稜線に入って行く。
登山口から20分ほどで送電塔の建つ眺めのよい平坦地に着いた。

日が昇って間もない空は雲が多いものの青空もそこそこ広がっており、
今日一日穏やかな梅雨の晴れ間が続くものと思われた。


送電塔からは鬼ヶ面山へと続く尾根上の樹林の中の急登が続く。

急登を続けること30分ほどで電波反射板が建つ高原のような広場に着いた。

そこからは行く手に鬼ヶ面山へと続く稜線が眺められた。
後半の貉沢カッチをはじめとする激しい登り下りの稜線は見えていないため実に穏やかな山容を呈している。

電波反射板から少し行くと鉄塔が3本並んで建っていた。
そこから振り返ると猿倉山の稜線を前にして、その両側遠くに会津朝日岳や燧ヶ岳を認めることができた。
写真の右端には平ヶ岳も見える。

鉄塔から平坦な道を進んで行き、途中で大白川への道を左に分ける。
そのあと傾斜は増すものの泥濘もなく歩きやすい道が南岳直下まで続く。



道の両側には小さな白い花が沢山咲いていた。
特にゴゼンタチバナは鬼ヶ面山稜線の登山道に沿ってほとんど途切れることなく見ることができた。


高度を上げて灌木地帯になるとまわりの展望が一気に開けてきた。
遠くに見えるのは会津朝日岳(中央)や丸山岳、会津駒ヶ岳、燧ヶ岳などの会津南部の山々。

会津朝日岳と丸山岳をズームアップ。

会津駒ヶ岳と燧ヶ岳。中央に奥白根山も見える。

さらに登って稜線を詰めて行くと、不意に浅草岳の大きな山容が視界に飛び込んできた。
6年前に登った只見尾根の様子がよく分かる。

本日最初のピークである南岳は目の前だ。

6時25分に南岳に到着。

今日の第一番目のピークから会津南部の山々。
左から丸山岳、会津駒ヶ岳、燧ヶ岳、平ヶ岳、荒沢岳、越後三山
手前の登ってきた尾根上に電波反射板や3本の鉄塔が見える。

これから辿る稜線を眺める。
写真のピークは南岳と鬼ヶ面山との中間にある無名峰で、鬼ヶ面山の山頂部はその右の稜線上に僅かに見える。

南岳を越えたのでそろそろヒメサユリが現れてもよいころだと思いながら、
稜線を15分ほど歩いたところでようやく念願の花に逢うことができた。

このあたりは終盤で萎れかけているものもあった。

そこから少し登って行くと今が盛りの群落があった。
ヒメサユリの花言葉は
「飾らぬ美」、「純潔」、「私の心の姿」とのこと(Wikipedia)

ヒメサユリはササユリから変化したものらしく本名はオトメユリ。

朝の日差しを浴びて咲いています。

ヒメサユリの群落を過ぎると鬼ヶ面山の山頂はもうすぐだ。

7時5分。鬼ヶ面山に到着。名前のある二番目のピーク。
今日は気にしていたブヨなどの虫もいなくて、初めての景色をゆっくりと眺めることができた。


鬼ヶ面山山頂直下から歩いてきた道を振り返る。今度は南岳の山頂部が僅かに見えている。
遠くは会津朝日岳から平ヶ岳にかけての山々。

鬼ヶ面山山頂から毛猛山の彼方に越後三山を見る。

荒沢岳、越後三山毛猛山(手前)をズームアップ。

振り返ればこれから辿って行く稜線が波打つように連なっている。
左端は三番目のピークである北岳。その右には貉沢カッチ。さらに高度を上げて前岳、浅草岳へと続く。
最終目的地である浅草岳はまだまだ遠い。今、時計は7時を回ったところなので、あと2時間ほどであそこまで行かなければならない。
微妙なところだが、とりあえず貉沢カッチまで行くことにした。


鬼ヶ面山を下って鞍部付近まで来るとヒメサユリの群落があった。
本日二回目の出会いです。

鬼ヶ面山とヒメサユリ。
このような怖い名前の山にこんな可憐な花が咲くとは・・・。

道端のヒメサユリ。

朝露に濡れたヒメサユリ。

咲き始めのヒメサユリ。まだ蕾のものも沢山ありました。

浅草岳とヒメサユリ。

北岳への途中から浅草岳を見る。手前の険しいピークは貉沢カッチ。

三番目のピークの北岳に向かう。

鬼ヶ面山の稜線上で最も高い北岳の山頂は縦走路から少し外れたところにあった。
そこには山頂の標識は見られず、灌木や草が生い茂って頻繁に人が立ち寄った形跡もないところだった。
写真は北岳の山頂から鬼ヶ面山を見たもの。

北岳山頂から、これから辿る稜線を見る。
前岳までの間にはムジナ)沢カッチを始めとする幾つかのピークが控えている。

北岳を下って次の無名のピークに向かう途中から貉沢カッチを見る。
6年前に只見尾根の鬼ヶ面眺めから見たとき、手前の無名峰と並んで人を寄せ付けない険しい山容をしていた。

同じところから見た守門岳。

8時15分に貉沢カッチに着く。本日四番目のピーク。
時間的には微妙だが、ここで少し休んでから浅草岳に向かうこととした。


貉沢カッチから来た道を振り返る。手前の無名峰から右の北岳、中央の鬼ヶ面山、その奥の南岳方面へと続く。
稜線の東面は険しく切り立った様相を呈している。

貉沢カッチで休憩したあと前岳までの最後の急登に向かう。
登山道は東面の絶壁に沿って高く遠く続いている。

険しく切り立った谷間から会津朝日岳方面を見る。

鞍部付近で三たびヒメサユリの群落に出会う。
日が高くなってピンクの色も一段と鮮やかに見えてきた。

はるばる大阪からやってきて、つくづく逢えてよかったと思うのだった。

この付近にはゼンテイカも咲いていた。

色とりどりに咲く花の群れ。

標高差200mの苦しかった登りを終えて五番目のピークの前岳に着く。
中央遠景は燧ヶ岳。ここにも道標らしきものはなかった。


前岳から少し行くと雪渓があり、そこからは6年ぶりに浅草岳の山頂を間近に眺めることができた。

雪渓の近くに咲いていたシラネアオイ。
終盤であまり元気がない様子ですが、見ることができただけでもよかった。

浅草岳直下の草原と池塘。遠くに守門岳。

浅草岳山頂直下に咲くヒメサユリ。

山頂直下のヒメサユリ。
このあたりはもう盛りを過ぎたのか、その数は少なかった。

6年ぶりの浅草岳。本日第六番目のピークで最終目的地。到着は9時30分だった。
時間もないので懐かしむ間もなく写真を撮ってすぐに下山の途についた。


前岳方面。辿ってきた木道が見える。

田子倉湖と南会津の山々。

浅草岳から鬼ヶ面山を見る。これからあの稜線を戻って行かなければならない。
後ろには毛猛山と越後三山。

 
 鬼ヶ面山と毛猛山と越後三山をズームアップ

 
 暑さで熱中症気味になって鬼ヶ面山直下のヒメサユリまで戻ってきました。
ここで座り込んで休憩。

 
 午前12時過ぎに鬼ヶ面山に到着。
ここまで来ればあとは下りだけ。ヤレヤレです。

帰途、南岳直下から浅草岳を振り返る。ここで見納めです。
浅草岳を9時40分頃に出発して起伏の激しい稜線を下っていったが、疲れと暑さで休憩を繰り返し、
結局登りと同じ時間をかけて登山口に戻ったのは午後2時30分だった。
帰途、入広瀬の寿和温泉で汗を流し、関越道を走って高崎に着いたのは6時40分頃。
新幹線を乗り継いで家に帰り着いたのは日付が変わる直前だった。


コースタイム
 往  六十里越(4:15)−電波反射板(5:15)−南岳(6:25-6:30)−鬼ヶ面山(7:05-7:15)−北岳(7:50)
     −
ムジナ沢カッチ(8:15-8:25)−前岳(9:10)−浅草岳(9:30)

 復  浅草岳(9:40)−ムジナ沢カッチ(10:45−11:00)−鬼ヶ面山(12:00−12:15)−南岳(12:45)
     −電波反射板(13:25-13:40)−六十里越(14:30)

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