毛勝山
2011年(平成23年)9月27日

メ モ
剣岳の北にある
毛勝山のことは毛勝三山の名前で山歩きを始めた頃から知っており、白馬岳の山頂からその堂々とした山容を眺めたこともある。しかしその山には登山道がなく、登頂できるのは積雪期のみということを知ってからは私の山登りの対象からは外れてしまい、それ以来数十年の間、毛勝山のことは頭の中から消えてしまっていた。
しかし、最近ネットで10年ほど前に魚津岳友会のご尽力によって北西尾根に登山道が切り開かれたということを知り、消えていた山頂を極める思いが再燃したのだった。だがその登山道は標高差1700mを10時間以上もかけて日帰りで往復する必要がある強面の道だった。これまで長時間かけた日帰りの山行として記憶に残るのは平ヶ岳と笈ヶ岳だが、標高差を加味すると毛勝山はこれらを上回るものと思われた。
とはいうものの、行くのならまだ少しは体力のある今のうちだと考えて、夏の暑さも過ぎ去った9月下旬の適当な日を狙っていたところ、27日から数日間北陸地方は好天気との予報だった。そこで都合の良い27日に休暇を取って、本当に積年の思いを込めて毛勝山に向かうこととした。
26日の午後11時に枚方の家を出発し、第二京阪、京滋バイパス、名神を経て北陸道の魚津ICを出たのは27日の午前3時を回っていた。ICから県道をほぼ一直線に南東方向へ進む。目的地まで3kmほどを残したところから地道になったのでスピードを落として慎重に運転していった。やがて暗闇の中に見えてきた片貝山荘を右にして少し行くと僧ヶ岳登山口に着いた。時刻は午前3時半を回っていたと思う。そこから東俣谷に架かる橋を渡ってほどなくして道が大きく右に回るところの左手に毛勝山の登山口があった。走行距離は約400kmだった。
(実際には登山口を行き過ぎて林道をかなり奥まで入ってしまい、結局分からず終いで僧ヶ岳登山口まで戻って、そこで少し休んだ。その後夜明けが近い5時ごろになって歩いて登山口を探してようやく見つけることが出来たのだった)。
今日は長丁場なので早く出発したかったが、未知の暗闇の道は危険が多いと思い、まわりが薄明るくなってきた5時45分に毛勝山目指して出発した。天気は申し分ないようだが果たして山頂まで体力が持つのだろうか、と不安を感じながら登山道に入っていった。

行 程

北西尾根登山口
↓↑
P1479
↓↑
モモアセ池
↓↑
クワガタ池
↓↑
毛勝山

距離     : 10.8km
最大標高差:1,663m
累積標高  :1,674m
  




 
天 候

晴れ
(気象庁 : 過去の天気図) 

山行記録

午前5時45分に登山口を出発する。
まわりに車が見られないので一番乗りなのは間違いないが、平日の今日は他に入山者はいないかも知れない。

毛勝山登山口と書かれた小さな板と赤い布きれが登山口の目印。
途中に道標は一切なかったが道ははっきりしており迷うことはなかった。


しばらく行くと根っこと岩の道の急登が始まる。

さらに登って行くと北西尾根に出るまでの間、写真のようなロープが張られた垂直に近い急登が連続する。

40分ほど激登を続けて6時25分に北西尾根の稜線に出る。
傾斜も緩くなった道を一息つきながら歩いて行くと左手の樹林の間から朝日を受け始めた僧ヶ岳が見えた。

北西尾根の下部では立派な立山杉を見ることが出来る。

登山口から1時間ほど登ったところの岩の上で小休止する。
標高は1200mほどだろうか。


岩の上からは駒ヶ岳を眺めることができた。
あの山は標高2000mほどだが、まだ随分高く見える。

樹林の中の変化の少ない道を黙々と登り続ける。
時折見える僧ヶ岳や駒ヶ岳の高さから自分の位置を憶測するしかない。


木の根と岩の露出した道。
登りはともかく、下りでは疲れた足を滑らして尻餅をつくことが二度や三度ではなかった。


7時55分にP1479三角点に到着。ここでようやく標高は1500m弱。
10分間ほど休憩をする。


頭上には、黄葉まで間がある木々の葉が陽の光に映えていた。

三角点の樹林の間から駒ヶ岳を見る。

三角点から30分ほど登って行くと木々の背丈もようやく低くなり、右手遠くに毛勝山と思われる頂が見えてきた。
だがこれは毛勝山ではなく、釜谷山へと続く稜線上の無名峰のようだった。

さらに登って行くと前方に高い頂が見え出す。
あれがモモアセ池のある2023m峰だろうか。

振り返ると駒ヶ岳の全容がよく見えた。あの山の高さから推測するとここは1700m位だろうか。
稜線の右の方に頭を覗かせているのは朝日岳かも知れない。

モモアセ池のある2023m峰を正面にして登山道は続く。ここからの標高差は250mほどか?
まわりの木々にはほんのりと色づいてきているものもある。

尾根上の眺めの良い岩の上で少し休憩してからモモアセ池を目指す。
写真はその途中で登ってきた道を振り返ったもの。

高度を上げてきたので、剱岳北方稜線越しに白馬岳も望めるようになってきた。

道は途中で樹林帯に突入。

樹林帯を抜けた後は灌木帯を行く。遠くに今日初めて毛勝山を見る。
時刻は10時前だが、まだまだ先は長そうだ。


剱岳北方稜線越しに後立山連峰北部を見る。
左から朝日岳、雪倉岳、白馬岳、杓子岳、鑓ヶ岳と続く。

登ってきた道を振り返る。
だいぶ見晴らしがよくなってきた。

途中で休憩した大岩から1時間ほどで、10時10分にモモアセ池に着く。
ただし池の名前などどこにも書かれていないので推定ではあるか・・・。
標高はようやく2000mを越えたものと思われる。遠くの山は駒ヶ岳。

モモアセ池付近は草原になっている。盛夏には沢山の花々で彩られることだろう。

モモアセ池を後にして毛勝山に向かう。右の山は振り返り見た駒ヶ岳。

モモアセ池から少し登ると突然前方に、鹿島槍ヶ岳から白馬岳にかけての後立山の眺めが開けた。
その素晴らしい景色に思わず歓声を上げる。将に山登りの醍醐味だ。

鹿島槍ヶ岳と五竜岳をズームアップ。40年前の縦走の辛かったことが思い出される。

白馬三山。長野県側から見た山容とかなり異なる。

まわりにはチングルマの綿毛が沢山あった。
モモアセ池から毛勝山山頂にかけては随所にお花畑があり、花の季節はさぞかし楽しい道となることだろう。
少々暑いかもしれないけれど・・・。

2023m峰付近から毛勝山を見る。だいぶ近づいてきたが、まだ2時間ほどはかかりそうだ。

2023m峰がどれなのかは分からないが、
この付近は少し複雑な地形をしており一箇所だけ道を間違えたところがあった。

2023m峰付近から2151m峰を見る。その上に僅かに毛勝山が見える。

上の写真と同じところから後立山連峰を見る。
手前は滝倉山、ウドノ頭などの毛勝山から続く剱岳北方稜線。

2151m峰への登りから2023m峰を振り返る。
遠くの山は駒ヶ岳。11時を過ぎて雲が湧き始めている。

2151m峰付近から毛勝山を見る。
あと残されたのは、あの300mほどの登りだけだ。

11時半に2151m峰と毛勝山との鞍部にあるクワガタ池に着く。
この池のまわりも気持ちのいい草原で、盛夏にはお花畑になるところのようだ。

クワガタ池から毛勝山を見る。長かった尾根の登りもあと少し。

10分ほど休憩してから最後の登りに取り付き、途中の草付きの斜面から登ってきた道を振り返る。
2151m峰と鞍部のクワガタ池が見える。駒ヶ岳は雲に包まれてしまった。

クワガタ池をズームアップ。

頂上まであと少し。あせらずにゆっくりと、しかし着実に足を運ぶしかない。

傾斜が緩くなった後もしばらく登りが続いたが、12時25分に遂に毛勝山山頂に辿り着く。
登山口を出発して6時間40分。感激もひとしおで、思わず一人で万歳と叫んだ。

まわりの景色が雲に隠れないうちにと、休む間もなく写真を撮りまくる。
頂上から少し奥に行くと剱岳方面の展望が開けた。
毛勝三山を構成する釜谷山、猫又山の彼方に剣岳や立山、大日岳などの山々が雲間に見え隠れする。

剱岳と立山遠望。

剱岳の山頂部分を拡大しました。
少し雲が邪魔ですが、岩の頂はなかなか迫力があります。

剱岳の右奥にみえる立山。

東側の草付きの斜面に移動して後立山連峰を眺める。(画像をクリックすると拡大されます)
こちらの天気は安定していて雲が湧き立つ様子もない。
以下に主要な山々をズームアップします。


蓮華岳

爺ヶ岳

鹿島槍ヶ岳。鋭い双耳峰が印象的。

五竜岳。これまでのイメージとは違った姿だった。

唐松岳と不帰のキレット。

白馬岳。左手前に旭岳。

最後に剱岳を見納める。

山頂直下の気持ちの良い草原で大休止し、まわりの展望を脳裏に刻んでから山頂に戻る。
結局これまで他の登山者の姿は見られなかった。下る途中も当然誰にも会わないだろう。
毛勝山は今日は私一人の山だった。

山頂の標識と小さな石仏。素朴なところがいいです。

山頂から見下ろせば毛勝谷はすでに雲の中。ここも雲に覆われるのは時間の問題だった。
名残り惜しいが時間もないので午後1時15分に下山を開始した。

下る途中で一旦雲に包まれた山頂も、クワガタ池に着く頃には再びその姿を現した。
毛勝山に最後のお別れをしてクワガタ池を後にした。

モモアセ池の近くで最後の休憩。
さすがに疲れました。

モモアセ池から下って2023m峰を振り返る。時刻は午後3時30分で日没まであと2時間少ししかなかった。
このあとは木の根が露出した道を何度も滑って尻餅をつきながら、沈み始めた太陽と競うようにして下っていった。
尾根の稜線から下り始めたのは5時25分頃。ロープを頼りに急降下を続けるうちにまわりが薄暗くなって行く。
最後は駆けるように下って、登山口に帰り着いたのは午後5時55分でまわりが闇に包まれる直前だった。
疲れは激しかったが、無事登頂して戻ってこれたことが嬉しかった。
少し休憩してから、すっかり暗くなった道を魚津まで行き、“満天の湯”に浸かって今日一日の疲れと汗と埃を洗い流した。
午後8時、さっぱりしたところで帰途に就く。途中休憩と食事を取りながら往路を戻って家に帰り着いたのは翌日の午前1時だった。
かくして日帰りとして最もハードな山歩きは無事終了した。

コースタイム
 往  登山口(5:45)−北西尾根(6:25)−岩(6:50−7:00)−P1479(7:55-8:05)−大岩(9:00−9:05)
     −モモアセ池(10:10-10:25)−クワガタ池(11:30-11:40)-毛勝山(12:25)
 復  毛勝山(13:15)−クワガタ池(13:40−13:45)−モモアセ池(14:25−14:40)−大岩(15:30-15:35)
     −P1479(16:15) −岩(17:00−17:10)−尾根下降点(17:25)−登山口(17:55)

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