朝日岳・蓬峠
2004年(平成16年)7月

メ モ
上越国境の谷川連峰のうち1998年の6月に平標山からトマノ耳までの縦走を果たしたあとは、残りのトマノ耳から白毛門に至る馬蹄形縦走路を踏破するのが目標の一つだった。この縦走では蓬峠のシラネアオイを見ることも目的としていたので、その時期はやはり6月と考えていた。しかしながら6月は梅雨の季節でもあり、毎年天気予報に気をもんでも、なかなか週末に晴れると言うことはなかった。ところが今年は梅雨入り後も二度の台風の時以外は雨らしい雨が降らず、空梅雨とも言える天候が続いていた。しかしその台風が肝心の週末にやってきたために山に行くことも儘ならず少し欲求不満が募ってきたところ、7月初めのこの週末は何とか期待できそうな予報だったので、積年の思いを遂げる絶好の機会と考え出掛けることとした。
今回の山行はいろいろ考えた挙句、かなり長距離ではあるが自宅から車で出掛けることとした。7月2日帰宅後、午後7時30分に家を出発して京滋バイパス経由で名神から中央道を走り岡谷からは長野道を行く。11時55分梓川SA着。軽い食事をし、ガソリンを補充して先を急ぐ。更埴からは上信越道になる。飯山ICを3日の午前1時5分に出て国道117号で津南を目指す。見知らぬ深夜の道を道標を頼りに走る。道標には木島平や野沢温泉など聞いたことがある地名が書かれてある。国道117号を走ること40分ほどで長野県から新潟県に移り、1時50分ごろ津南の町に入る。ここは7年前の10月に苗場山に登った帰りに通ったところだ。往時と変わらないガソリンスタンドやバス停を見てその時のことを思い浮かべた。
津南の町を過ぎてしばらくして越後湯沢に抜ける国道353号に入る。夜空には満月が煌々と輝いており天気はよさそうだった。トンネルを抜け、カーブを切り返しながら国道17号に出て午前2時30分ごろ湯沢ICから関越道に入る。長い長い国境のトンネルを抜けると群馬県だ。水上ICを出て国道291号で土合を目指す。湯桧曽駅を過ぎ、さらに山道を進んで3時頃に土合駅に着く。駅前を通り過ぎ、踏切を渡ってしばらく行くと土合橋に出る。その右手前のドライブインの横の道に入ると大きな駐車場があった。そこが朝日岳への登山口で、午前3時5分に到着する。家から566km。
駐車場には既に何台かの車が留めてあり、テントを張っている人もいるようだった。まだ暗く、長距離運転の疲れもあるためしばらく横になって休憩した。4時を過ぎると明るくなってきたので起きて定番の朝食をとる。その後土合駅まで行って顔を洗い、少しさっぱりとした気分になって駐車場に戻り、支度をして4時45分に出発した。空には少し雲があるが梅雨時にしては上々の天気だった。

行 程
 
3日土合登山口−松ノ木沢ノ頭−白毛門−笠ヶ岳−朝日岳−ジャンクションピーク−清水峠
   −七ツ小屋山−蓬ヒュッテ(泊)
4日:蓬ヒュッテ−武能岳−蓬峠−白樺小屋−武能沢−一ノ倉沢−松ノ木沢−土合登山口

天 候 3日:晴れ 4日:快晴

    

【7月3日】
 
 登山口には馬蹄形縦走路の案内板があった。
今日辿るルートを確認する。

朝日岳への道は駐車場の奥に見える小高い尾根につけられている。

駐車場を進んで行くと馬蹄形縦走路の案内板があり、その横に道標が立っていて白毛門まで3.1km、朝日岳まで6.5kmと書かれてあった。

 
東黒沢を橋で渡って沢沿いに樹林の中の道をしばらく行くといきなり急登が始まる。尾根筋が明確でない急斜面を直登するうちに道は木の根が露出した痩せ尾根に変わってくる。

  尾根を急登する途中で道端にギンリョウソウを見つけた。真っ白い不思議な植物です。

 
 急登を続けること1時間ほどで小広い平坦地に出た。松ノ木沢ノ頭まででちょっとした平坦地はそのあたりだけだった。
そこを通り過ぎてしばらく緩やかな道を行き、尾根の左側から右側に移るとき遙か遠くに白毛門の頂が望まれた。
頂上直下にはジジ岩と思しきものも見えている。

尾根の左側には樹林の間から谷川岳が垣間見えた。白毛門の上空とは違ってこちらの空には雲が多い。

登り続けるうちにまわりは灌木帯になり展望が一気に開けてくる。稜線の上空に雲をなびかせている谷川岳も一ノ倉沢を正面にした均整のとれた姿になっている。

松ノ木沢ノ頭直下の岩場。鎖も設けられている。

岩場から土合方面を振り返る。天神平もここと同じ高さに見えた。

 
 7時5分に標高1484mの松ノ木沢ノ頭に到着。

松ノ木沢ノ頭からの谷川岳は、マチガ沢、一ノ倉沢、幽ノ沢それぞれに一筋の雪渓を残し、
真っ正面に一ノ倉沢の大岩壁を擁した実に堂々とした山容であった。
谷川岳の右手には一段低くなって武能岳が続き、さらにその右手の緑の稜線上に一点の黄色いものが見えた。
それが今日の宿の蓬ヒュッテに違いなかったが、それはなんと遠くにあることかとただ茫然とするばかりであった。

行く手には頂上直下にジジ岩とババ岩とを並べた白毛門が大き立ちはだかっていた。
なかなか登り甲斐がありそう。

 
 ジジ岩とババ岩を横に見ながら登って行く。

 
 白毛門頂上直下からはこれから辿ってゆく笠ヶ岳と烏帽子岳が高く大きく見えた。
朝日岳はあの山の向うでまだ見えていない。先は長くしんどそう。

 
 松ノ木沢ノ頭から40分ほどかけて7時50分に標高1720mの白毛門に到着した。

白毛門からの谷川岳。谷川岳はここからの眺めを白眉とする。
幸いなことに稜線上の雲も薄くなり、青空が広がってここに来て最高の条件が揃ったのだった。

 
 白毛門山頂からはこの先の笠ヶ岳から烏帽子岳へと続く山容が眺められるが、
今日歩くルートの中での最高峰の朝日岳は烏帽子岳に遮られてまだ見えない。
とにかく先はまだまだ長い。運良く得られた谷川岳の豪快な素晴らしい眺めもそこそこにして先を急ぐ。

 
笠ヶ岳へは灌木や笹に覆われた稜線に沿って緩く下った後、200mほどを登り返して行く。稜線にはゴゼンタチバナが沢山咲いていた。

  笠ヶ岳直下の登りはきつかったが、どうにか8時50分に標高1852mの山頂に辿り着いた。

 
 笠ヶ岳の山頂からは360度の眺めが得られた。
南には先ほどまでいた白毛門。右奥には天神平も見えている。

 
 白毛門の右手遠くに湯桧曽川を隔ててかなり形の変わった谷川岳。

 
 北にはこれから行く朝日岳が大烏帽子岳の後ろに控えていた。
笠ヶ岳山頂で20分ほど景色を堪能してからその朝日岳を目指して出発した。

 
 笠ヶ岳から一下りすると烏帽子岳との鞍部に着く。
ここは平坦に開けた気持ちの良い草原で、名も知らぬ白い花の群落が見られた。

鞍部を過ぎると烏帽子岳への登りが始まる。
朝日岳まではこの烏帽子岳を初めとして大小7つのピークがあり、疲れの出てきた体には少しこたえるところだった。
標高1934mの大烏帽子岳には9時40分着。波打つ鋭い稜線の先に平坦な朝日岳の頂きが望まれた。

3つほどピークを越えて行くと稜線の岩場のまわりに白い花の群落が見られるようになる。
ホソバウスユキソウというエーデルワイス科の花で、朝日岳の頂上まで随所に見ることが出来た。
これは縦走中唯一得られた群落の花だった。

 
 ホソバウスユキソウが咲く標高1945mの朝日岳山頂には10時30分に着く。
振り返ると、谷川岳は烏帽子岳、笠ヶ岳の先のはるか彼方に遠ざかってしまっていた。
早朝から歩き始めておよそ6時間、ようやく疲れが出始めてきた。買ってきたお弁当を食べて一息つく。

行く手を眺めると山頂の北側にはこれまでの道とは打って変わって平坦な地形が広がっていた。
朝日ヶ原という湿原だ。
10時50分に朝日岳山頂を辞し、その朝日ヶ原を通って清水峠を目指す。

 
  朝日ヶ原からは奥利根の宝川温泉へ下る道が分岐している。
今朝からここまでは、単独行の男性と男女の二人連れが前後して来たが、
その人達はここで引き返したのか或いは宝川温泉へ下ったらしく、これ以後は私一人の縦走路となった。

 
 木道が設けられた朝日ヶ原には期待していた花は全く見られなかった。もうその時期は過ぎてしまったのだろうか。
花の季節は短く、うまく巡り会うのは難しい。

湿原を過ぎて平坦な道をしばらく行くとジャンクションピークに着く。巻機山方面への国境稜線との分岐点だ。これから行く清水峠への道も上越の国境上の稜線となる。

ジャンクションピークから清水峠への道のりは長く、下るうちに暑さで体が火照り出し、足の裏が痛み出した。1時間ほど下ってようやく池ノ窪を過ぎ、緩い坂を登り返して12時10分に鉄塔の基部に辿り着きそこで大休止とした。振り返ればジャンクションピークが遥か頭上に聳えていた。

30分ほど体を休めて多少は疲れもおさまったところで先に進む。5分ほど歩いて12時45分に清水峠に降り立つ。

峠から冬路の頭を越え、折から湧き出した霧の中の登りを終えて標高1675mの七ツ小屋山頂上に着いたのは午後1時50分。
10分ほど休んでから起伏の少ない笹原の中の道を行き蓬ヒュッテに着いたのは午後2時50分だった。馬蹄形縦走路の長かった前半はここで終了です。

【7月4日】
 
 昨夜は隣の人の騒音で全く寝ることが出来ず、すっきりしない朝を迎えた。
しかし4時頃に外に出てみると空は雲一つない快晴の好天気だった。
御来光を見るために昨日来た道を少し登り返す。朝日は午前4時35分に清水峠の方向から昇り始めた。

赤く染まって行く武能岳や谷川岳を写真に収めてから小屋に戻って朝食を戴いた。
そのあと荷物をまとめて午前5時5分にヒュッテを出発した。
今日は天気は良いし、できれば谷川岳に登って馬蹄形縦走を完成させたいところだったが、
昨日の疲れが取り切れておらず体調が良くないので、武能岳を往復したあと白樺尾根を下って土合に出るコースを取ることにした。

蓬峠で土合への道を左に見て武能岳への稜線上の道を行く。

七ツ小屋山方面を振り返る。
登るうちに笹についた朝露であっという間にズボンがずぶ濡れになってしまった。

緑の絨毯に覆われて穏やかな山容を見せていた武能岳も、
近づくにつれて急登が続いて疲れた体には結構こたえた。

武能岳へ登る途中で国境稜線方面を振り返る。
蓬峠から七ツ小屋山へと続く緑のたおやかな山並みが美しい。その彼方には巻機山が見える。
七ツ山小屋の左に見えるピラミッドは、上越のマッターホーンと言われる大源太山。

 
 武能岳までは途中幾つかのピークがあり、緩急織り交ぜた登りが続く。
早朝にもかかわらず昨日に比べて風も少なく結構暑い。
最後のピークに登りついたあとは平坦な稜線を歩いて5時45分に標高1760mの武能岳山頂に着いた。

 この山頂からはまさに360度の素晴らしい展望が得られた。
北には雲一つない快晴の青空の下に、遠く巻機山や平ヶ岳などの上越国境の山々が、
また近くには昨日から歩いてきた清水峠から蓬峠までの稜線が一望のもと。

 
 東には笠ヶ岳から烏帽子岳、朝日岳にかけての山々。

その右には白毛門の彼方に武尊山や奥白根山、男体山、皇海山などの日光の山々。

そして南には目前に一ノ倉岳と茂倉岳。

さらにその右手には万太郎山、仙ノ倉山、平標山など谷川連峰の峰々が、
あるものは鋭く、あるものはたおやかに連なっていた。
素晴らしい展望を得られたことに満足して6時15分に帰途につく。

 蓬峠には6時45分に戻る。ここからは武能岳の東斜面の笹原をトラバースするように下って行く。
冬季の積雪量が多いためか、途中にはガレ場が多く、少し緊張するところもあった。

15分ほど下ると水場に出た。登ってくるときには最後の水場となるところだ。水源は少し上の雪渓で、流れる水は冷たく、汗にまみれた顔を洗ってすっきりとした気分になった。

流れのそばには可愛いイワカガミが群を為して咲いていた。

 
 その後トラバースを続けるうちに三度水場に出た。いずれも雪渓を水源としたものだろう。
やがて樹林帯に入り白樺尾根に取りつく。
 緩やかな下りが続いて7時55分に清水峠への水平道との分岐に着く。そこから少し行くと小さな白樺小屋があった。
さらに下り続けて2つ目の送電塔で休憩し、はるかな蓬峠を見納めた。

 
 白樺小屋から続いたつづら折りが終わった後も緩やかな下りはなおも続く。
朝の日差しに映える樹々の緑が綺麗な道を下って行くと武能沢に出た。
白樺尾根はそこで終わり、あとは湯桧曽川に沿った道を行くことになる。時刻はちょうど9時。。

武能沢からは谷川岳東面下部の巻き道となるため、茂倉沢を始めとして幽ノ沢、一ノ倉沢などを横切って行く。
幽ノ沢には10時頃に着き、そこで小休止する。
 一ノ倉沢出会分岐を10時25分に通過し、しばらく行くと一ノ倉沢に出た。
沢に沿って少し下って行き湯桧曽川の河原に出て振り返ると目の前に一ノ倉沢岸壁が圧倒的な迫力で迫ってきた。

 
 そのあとマチガ沢を立派な真新しい橋で渡って少し行くと駐車場に出た。
蓬峠を往復する場合はここまで車で来ることが出来る。
対岸には松ノ木沢が湯桧曽川に流れ落ちている。沢というよりも滝といっていいほどの急流だった。

 
 駐車場からは車道を歩いて行く。
遠くの白毛門への尾根が徐々に近づいて来るのを見て、この山歩きもいよいよ最終段階になったことを感じる。
右手奥に滝が現れるとしばらくして国道291号に出た。土合橋を渡ってドライブインの横の道に入り、
昨日出発した登山口の駐車場に戻り着いた。時刻は11時20分。長い長い谷川岳馬蹄形縦走は不完全ながらもここで終了した。
 計画どおりに行かなかったこともあり心残りはあるものの、期待した展望を充分に得ることが出来た満足感を持って11時30分に家路に就いた。

コースタイム
(休憩を含む)
3日 土合登山口(4:45)−松ノ木沢ノ頭(7:05)−白毛門(7:50)−笠ヶ岳(8:50)−朝日岳(10:30)
    −ジャンクションピーク(11:10)−清水峠(12:45)−七ツ小屋山(13:50)−蓬ヒュッテ(14:50)
4日  蓬ヒュッテ(5:05)−武能岳(5:45)−蓬峠(6:45)−白樺小屋(8:00)−武能沢(9:00)
    −一ノ倉沢(10:30)−松ノ木沢(10:55)−土合登山口(11:20)

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