蕎麦粒山
2000年(平成12年)11月4日

メ モ


奥美濃のほぼ中央に位置する蕎麦粒山は、三周ヶ岳の南の1252m峰から主稜線と別れて東に派生し、烏帽子山やホハレ峠などを経て続く稜線上にあるが、東隣の小蕎麦粒山と並んで恰も独立峰のように見えます。
蕎麦粒はソムギと読む。これはソバの実のことで、鋭い三角錐の山容を表現しているとのことです。この山は奥美濃の主脈から離れているため主稜線上の山々からは割合目につきます。私がこの山を知ったのは年ほど前で、能郷白山から金糞岳を眺めた時にその右手に聾える鋭い山体を認めてからのことです。登山道もなかったこの山に、最近地元の方々の努力により道が切り開かれたことを知り、紅葉と展望を求めて行ってみることにしました。
未明に家を発ち、大垣から揖斐川を遡り、横山ダムを経て霧が立ちこめる坂内の西俣谷出合に着いたのは6時過ぎだった。林道はまだ先の方に続いているが、崖崩れがあって通れないので、車を止めて支度をして6時30分に出発した。他に人や車は見られなかった。
林道を少し行くと右手の斜面に迂回路が付けられていたのでロープをつたってよじ登って行った。しかしこれが急斜面を直登する厳しい道で、折り返してきた林道に出た時は既に疲労困憊の状態だった。その後林道を左に折り返して歩いて行くと崖崩れの最上部で道は完全になくなっていた。仮の道が崩壊した斜面の上に細々とつけられており、それに沿って張られたロープを頼りにカニの横ばい状態で横切るという具合だった。
ここが崩れてしまったら蕎麦粒山に登ることが出来なくなるのではないかと心配する。出発早々こんなことではこの先が思いやられるなぁと思いながら荒れた林道を行く。そのうち霧が晴れ始め、頭上の稜線が朝日を浴びて黄金色に輝きだした。少し気分が明るくなってきた。
歩き続けて左手のはるか下の方に見えていた沢もいつしか道の脇を流れるようになる。山が迫り、谷がかなり狭くなって林道が尽きた後も細い流れになった沢の左岸に沿って道は続く。やがて対岸に登山口の印があったので沢を渡る。このとき足をすべらして下半身がずぶ濡れになってしまった。出発して1時間ほどの間に予期せぬことが続いて先行きが不安になる。しかし天気も良いしまだ時間も早いので気を取り直して登山口を7時50分に出発した。

行 程

西俣谷出合
↓↑
林道終点
↓↑
登山口
↓↑
小蕎麦粒山分岐
↓↑
蕎麦粒山

距離     : 11.2km
最大標高差:  939m
累積標高  : 1,100m
 




天 候

晴れ
 原典:気象庁「天気図」、加工:国立情報学研究所「デジタル台風」

山行記録

 
 西俣谷出会から1時間ほど歩いて、登山口を7時50分に出発。
始めしばらくは沢に沿った道だが、すぐに左手の尾根に取り付き急登が始まる。まさに木の根を掴む登りだった。

この登山道は蕎麦粒山と小蕎麦粒山とを結ぶ稜線に突き上げている急峻な尾根につけられている。
道の脇には石楠花とイワカガミが多く、花が咲く月頃はさぞかし綺麗だろうと想像しながら喘ぎ喘ぎ登る。



 
 それでも30分ほどすると道はやや平坦になり岩が露出した見晴らしの良い痩せ尾根に出る。
そこから右前方に小蕎麦粒山を仰ぎ見る。今年は紅葉が少し遅れておりちょうど今が盛りのようだ。
山肌は麓から稜線まで赤や黄色で彩られて、青空を背にして極彩色の眺めが広がる。


 
 登山道を進むうちにやがて再び急登が始まる。
登山口から時間はどして小さなピークに着き、そこからしばらくは平坦な道になる。


 
 このあたりの樹林は紅葉真っ盛りで本当に見事な美しさだった。


左手の樹々の梢の聞から蕎麦粒山が垣間見えるが山頂まではまだまだ遠そうだった。


 
しばらく行くと第二のピークに着く。小蕎麦粒山が間近に見える。


第二のピークからは東側の展望が開け、遠くには左右に裾野を広げた御嶽が望まれた。
御嶽の右に連なる山並みは10月に登った中央アルプス。


 
 このあと痩せ尾根の小さな登り下りがあり、最後に潅木帯の道を急登して15分に稜線に辿り着いた。
稜線上の小さな岩に登ってまわりを眺め渡す。間近に小蕎麦粒山が見える。


 
 振り返れば行く手には蕎麦粒山が聳えているが、あの頂きまで行くには稜線の鞍部まで大きく下り、
さらにそれ以上を登り返す必要がある。あと時間はかかるだろうか。



 
 蕎麦粒山の左手には湧谷山の彼方に金糞岳が白倉の頭と並んで見える。
少し休んでから蕎麦粒山に向かってもう一頑張りする。


 
稜線の踏跡ははっきりしているが、背丈ほどもあるササがその上に覆い被さっている。
下って行くとササについた朝露が降りかかってきて上半身が冷たく濡れる。しかたなく屈み込んでササのトンネルを潜るようにして歩く。
鞍部からは陽が差して朝露もなくなるが、今度は手でかき分けながら平泳ぎのようにして登って行かないと進めない。
薮こぎとまでは行かないがなかなか骨が折れる。そのうち急にササがなくなり、変わって石楠花が現れる。

日影の急斜面をよじ登って潅木に覆われた道を進み1010分に頂上に着いた。


 
 蕎麦粒山の山頂は潅木が切り開らかれた狭い平地で、ちょうど冠山や三周ヶ岳のような感じだった。
三角点に触れて登頂を確認してからリュックを下ろし、山頂の写真を取ってゆっくりと展望を楽しむ。

写真は小蕎麦粒山(手前左)と五蛇ヶ池山(手前中央)。


 
 まず目につくのは北の能郷白山の左遠くに見える白山だ。しかし11月というのに雪は全く見られない。
年前の同じ時期に三周ヶ岳から見たときは真っ白だったが。



白山の手前の能郷白山は奥美濃の山の中ではやはり桁外れに大きいが、
この方向からは横に長い山を縦から見るためあまり迫力がない。この山も三周ヶ岳から見たときの方が姿がよい。
能郷白山の右手には北アルプスから中央アルプスまでの中部山岳が展開するはずだが、
残念ながら雲が出てきたため眺めは得られなかった。



 
 能郷白山の左には冠山と部子山。


 
 さらに左に三周ヶ岳と黒壁山。
展望を楽しんでから弁当を食べて休憩する。11月だが天気が良いのでそれほど寒くない。
休んでいる間に稜線にかかる雲はますます増えてくる。時間も気になってきたので11時に下山を始めた。



蕎麦粒山を下った鞍部付近から見た小蕎麦粒山。
山頂から下り始めるとき、ちょうど入れ替わりに男女二人のパーティがやって来た。そのあと急斜面を下りササの道に取り付いたころ
人のパーティとすれ違う。さらにササの道を下り、鞍部から尾根の分岐点まで登り返すと男性が一人休んでいた。

先はどの男女二人のパーティの一員らしいがリタイアしたと言っていた。
分岐から小蕎麦粒山までは指呼の距離だが、時間もないためまた機会があれば行くことにして今回は割愛した。


西俣谷出合いから見た蕎麦粒山。
尾根の下りは急坂が続くため慎重にならざるを得ず結構時間がかかる。足をがくがくさせながら登山口には午後時過ぎに着いた。
沢を渡って林道を戻って行く。計画どおり山行を終えた充実感に浸り、まわりの紅葉を眺めながらのんびりと歩いて行くと
登山姿の女性が二人前方を歩いていた。私の足音に気付いたのか、立ち止まって話しかけてきた。
なんでも登山口の沢を渡ることが出来ずに引き返してきたらしい。こんな遅い時間に来ること自体が考えられないことで、引き返してよかったと思う。
二人を追い越して西俣谷出合には10分に帰り着いた。

紅葉の時期の晴天の休日にもかかわらず山頂を独り占めして素晴らしい眺めを得ることが出来た。
途中で出会ったのは僅かパーティ10人ほどで、静かな山歩きを思う存分満喫した一日だった。




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