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泉鏡花の戯曲で有名な夜叉ヶ池は美濃と越前の国境の標高1100mほどの山の上にある。そこから稜線に沿って東に行くと三周ヶ岳に辿り着く。奥美濃の山々の中でも数少ない一等三角点が設けられたその山頂からは、白山や能郷白山を始めとする奥美濃の山々の広闊な展望が得られるということで、大気の澄んだ11月の連休を利用して出掛けることにした。
この山には福井県と岐阜県の両側からの登山道があるが、今回は表登山道とも言える福井県側の岩谷から登ることとし、深夜の北陸道を走り、今庄ICを出て登山口に着いたのは6時前だった。登山口の鳥居を潜って登山を開始する。しばらく起伏の少ない道を歩いたあと尾根の登りが始まる。苦しいがドンドン高度を稼げるので登り甲斐がある。何となく南アルプスの三伏峠への道を思い出すようなところもありなかなか良い尾根道だった。厳しい登りも終わって巻き道になり、不意にまわりが開けた夜叉ヶ池に着く。ちょうど朝日が差し始めたところでもあり、思ったよりも明るい雰囲気で神秘的な感じはしない。池の畔を回って稜線に立つとさすがに冷たい風が吹き抜ける。稜線はうっすらと雪に覆われている。
夜叉ヶ池から小さなピークを2つほど越えて三周ヶ岳の小広い山頂に着いたのは9時を少し回っていた。晩秋の雲一つない青空の下の展望は予想どおりだったが、中でもはるか遠くの新雪を戴いた白山が神々しく素晴らしかった。その右手にこの6月に登った能郷白山を、奥美濃の山々の中でも一際高く大きく望むことが出来た。
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