宮之浦岳・永田岳
2000年(平成12年)5月

メ モ
去年の九州北部に続いて今年は南部の山を目指す。
前日夜行で西鹿児島に着き、トッピーで屋久島に渡る。船に乗るころから雨が降り出し、屋久島に着くころには本降りになる。仕方なく雨の中を淀川登山口から淀川小屋まで歩く。1日目はここで泊まる。
夜半まで降り続いた雨は翌朝は小雨になっていた。暗いうちから支度をして5時前に小屋を出る。天気が悪いためにまだ周りは暗い。1時間ほど登って高盤岳展望台に着くころには雨も上がり、ようやくあたりは明るくなってくる。相変わらずの曇り空だが、一瞬雲が切れて高盤岳が姿を見せた。これからの天候の回復を期待して先に進む。霧に包まれた小花之江河や花之江河を過ぎ、黒味岳への道を左に分けて投石湿原を登って行く。時折霧が晴れ、雲が切れて青空が覗く。投石平から安房岳、翁岳を巻いて行き、栗生岳に登るころには雲の動きも早くなり空の明るさが増してきた。巨岩が積み重なった栗生岳の頂上を越えて宮之浦岳に辿り着いたが、相変わらずの天気で山頂からの視界はほとんどなかった。しかし風は強く時々雲が切れて永田岳の黒い山体や抜けるような青い空が現れた。天候の回復傾向は顕著だったが一気に晴れるところまでは行かない。時間もないので取り敢えず永田岳に向かう。
焼野三差路を過ぎて下っていくと前方の雲がゆっくりと動き始めて青い空を背にした永田岳が姿を見せ始めた。いよいよ本格的に天候が回復して来たようで、見る見るうちに永田岳の全容が目の前に現れる。急いで鞍部まで下り頂上を目指す。振り返ると宮之浦岳にまとわりついていた雲も急速に消えて行く。喘ぎながら辿り着いた永田岳からは次々に雲が追い払われて姿を現してくる屋久島の山々を眺めることが出来た。絶妙のタイミングの回復だった。
永田岳から下ったあと再度宮之浦岳に登る。先ほどとは打って変わった山頂で広闊な展望を楽しんでから山頂を辞し帰途についた。


行 程


淀川登山口
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淀川小屋(30日、1日泊)
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小花之江河
↓↑
花之江河
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投石平
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栗生岳
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宮之浦岳
↓↑
永田岳


距離     : 16.5km
最大標高差:  565m
累積標高  : 1,192m
  
 




天 候

4月30日:雨
5月 1日:曇り後晴れ
    2日:晴れ
 
 原典:気象庁「天気図」、加工:国立情報学研究所「デジタル台風」

山行記録

1日目。
鹿児島からトッピー号に乗り、種子島の西ノ表を経由して峨峨たる山並みを見上げながら
宮之浦港に着いたのは午前10時12分だった。レンタカーの手続きをして10時20分に宮之浦を出発する。
このころから本降りとなり雨足が強くなってきた。
安房経由で紀元杉や川上杉を横目で見ながら林道を走り、11時35分に淀川登山口に着いた。
支度をして12時25分に雨の中を出発する。


入口の木の階段を登って樹林の中の道を行く。起伏の少ない巻き道を30分ほど行くと湿地帯の木道になり、
やがて右手に淀川小屋が見えてきた。傍には清流で知られた淀川の流れがある。
この日は小屋の一階の左側の入口側の端を占拠した。特にすることもなく午後5時ごろから夕食を取り、
暗くなるのを待って寝るのみだった。雨は相変わらず降り続いている。


2日目。
昨日小屋に着いた時はまだよく空いていたが、その後夕方にかけて到着する人が多くなり、小屋は結構混んでいた。
3時半ごろに起きて外に出ると相変わらず雨が降っている。しかし空を見上げると時々星も見える。
多分天気は回復するだろうと思って小屋に戻り簡単な朝食を取って午前4時40分に小雨の中を出発した。
外はまだ真っ暗だった。小屋を出て左に少し行き淀川に架かる橋を渡って登山道に入る。


懐中電灯を片手に真っ暗な登山道を歩く。小屋から1時間で高盤岳展望台に着いた。
夜が明けて明るくなり雨も止んだようだが霧が立ちこめていて何も見えない。
突然上空に青空が覗き高盤岳が姿を現したが、それも束の間のことであたりは再び霧に閉ざされた。
果たして天候はいつ回復するのだろうか。再び歩き続けるうちに道は下りになり午前6時に小花之江河に着いた。


小花之江河から15分ほどで花之江河に着く。霧が立ちこめてまさに幽玄の世界そのものだった。
ここは登山口から宮之浦岳まで8kmのちょうど中間地点になる。


その後霧の中を歩いて投石平、最後の水場、栗生岳などを黙々と通り過ぎて行く。
投石平や栗生岳の一角には岩小屋があり、そこで雨を避けて少し休むことが出来た。
宮之浦岳に取り付くころから時々日が射すようになってきたが、
小雨もある霧の中の道を登って午前8時45分に宮之浦岳の頂上に着いた。


そこでは既に何人かの登山者が休んでいた。期待していた天候の回復はなく、展望のない山頂は少しもの足りなかったが、
日本最南端の高峰に到達したことは感慨ひとしおだった。
山頂で休んでいるうちに雨はようやく上がり、風が出てきて霧がどんどん流れて行く。
時々頭上に青空が覗き日が射す。突然南側の展望が開けて真っ青な空と雲海が視野に飛び込んできた。


西側には急速に流れ飛ぶ白い雲の切れ間から永田岳の黒い山体が見え隠れする。
しかしそれも瞬間的なことですぐに霧によって総てが覆い隠されてしまう。
30分ほど待ってみたが大きな変化はなさそうなのでとにかく永田岳に向かって出発することにした。


ヤクザサの中の急な道をドンドン下って行き15分ほどで焼野三叉路に着く。
ここで高塚小屋方面に行く道を右に分けて永田岳を目指す。
永田岳への道に入ると急に人影がなくなりただ一人ヤクザサに包まれた道を行く。
三叉路から鞍部までの間は深いヤクザサをかき分けて行く。
やがて鞍部を見下ろす見通しの良いところに出た。そこで休んでいると永田岳が白い雲間から姿を現してきた。


しばらくは雲間に見え隠れしていたがやがて青い空の中にくっきりとその全貌を露にした。
切り立った山体は全身ヤクザサに覆われ、山頂部には白い巨石が点在している。
天気はようやく本格的に回復してきたようだった。


鞍部に降り立ってからいよいよ最後の登りに取りかかる。
ヤクザサと岩の中の道はかなりきつかったが早く頂上に着きたいという気持ちで遮二無二登り続けた。


振り返ると北から南へと流れて行く雲間から宮之浦岳の黒い山体が見えてきた。
夢中でシャッターを切った。


そのあと頂上直下の岩場をロープを辿って急登し、
午前10時40分に巨岩の積み重なる標高1886mの永田岳頂上に到着した。


風は強いが天気は完全に回復し、真っ青な空の下に宮之浦岳を始めとする屋久島の山々が
雲を払って次々と姿を見せ始めている。
天候の回復はこの永田岳から始まり、徐々に東の方へ移っているようだった。


こんな素晴らしい景色を一人占めして本当に万歳三唱でもしたい気分だった。


振り振り返れば流れ下る永田川の果てに永田の集落が見え、
その先は紺碧の海になつている。遥か沖には名も知らぬ島が見える。


左手には国割岳が、そして右手にはネマチ峰から障子岳へと険しい岩稜が続いている。
雄大な眺望を目のあたりにして壮快な気分だった。


天候が思わしくない時は鹿之沢小屋で一泊し明日に期待しようと思っていたが
どうやらその必要はなさそうだ。


まわりの眺めを満喫してから午前11時5分に頂上を出発した。
途中で何人かの登山者とすれ違いながら下って鞍部に降り立つ。
写真は途中で見た巨岩。何か名はあるのだろうか。


鞍部から焼野三叉路までは割合平坦な道だが宮之浦岳への最後の急登はきつかった。
暑くなってきたので途中で雨具を脱ぎ、喘ぎ喘ぎ登って12時25分に再登頂を果たす。


展望が開けた山頂は先ほどの霧に閉ざされた時とはまるで印象が違った。
西には先ほどまでいた永田岳が鋸の刃のような険しい山稜を連ねている。


永田岳の山頂部。
登山道は中央の台形のピークに向かってつけられている。


東には安房岳から投石岳、黒味岳などの峰々が居並び、その後ろには果てしなく雲海が続いている。
不思議なもので霧が晴れるとともにあんなに激しかった風がぴたりと止んでしまった。
早朝からの山歩きで疲れも出てきたので昼食をとって一休みした。


至福のひとときを過ごして午後1時15分に山頂に別れを告げて帰途につく。
宮之浦岳からの下りはまるで自然の庭園を散歩するかのような気分です。
正面には翁岳、安房岳、投石岳、黒味岳が続く。


宮之浦岳を振り返る。


ヤクザサの中に散在する、自然が彫刻した様々な巨石を眺めながらのんびりと下る。


特に印象に残ったのは栗生岳山頂の岩だった。


どう見ても人の顔です。


翁岳の山腹にある岩もなかなか面白い。


翁岳の山頂には翁岩が乗っている。


この巨岩はどこにあったのか覚えていません。


翁岳下から安房岳の山腹をトラバースし、午後2時に最後の水場で小休止する。


水場を出て安房岳の巻き道から栗生岳を振り返る。


安房岳の巻き道を投石岳に向かって行く。


投石岳の巻き道で振り返ると永田岳と宮之浦岳が並んで見えた。
最後のお別れをする。


その先の投石平から湿原を通り、黒滝の横をロープを使って下り、
黒味岳の尾根に沿って歩いて行くと黒味別れに出る。
そこから少し先の花之江河には午後3時30分に着いた。
正面に黒味岳を控えた景色は朝の時とは違った明るい雰囲気になっている。


さらに小花之江河には3時50分に着く。
ここも朝とは違って、陽に映えた景色は自然庭園そのもので一段と素晴らしい眺めだった。
遠くに黒味岳と投石岳が雲間に見え隠れしている。


明るい小花之江河。小花之江河からは樹林の中を下り続けて午後4時50分に淀川小屋に帰り着いた。
時間も遅く多分小屋は満員だろうと思っていたが、案に相違してよく空いていたので、ここでもう一泊することにした。


3日目。
鹿の鳴く声で時々目を覚ましはしたものの割合良く寝られた。支度をして午前5時過ぎに二晩を過ごした小屋を後にした。
樹林の中の道を登り下りして5時45分に登山口に戻る。
登山口ではタクシーなどがひっきりなしに到着してその都度登山客を降ろして行く。今日から入山者は一段と増えそうだった。
登山口を6時に出発して紀元杉などを見ながら次の目的地、開聞岳に向かった。



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