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この休日に予定していた苗場山行が山小屋が満員のため延期となったので、その代わりとして奥美濃の中でも特異な山容で人気のある冠山へ行くことにした。他の奥美濃の山と同じようにこの山もアプローチが長い。したがって往路は時間的に早くなる福井県側から冠山峠に向かった。
小型車がやっと通れる細々とした曲がりくねった冠山林道を高度を上げながら走って冠山峠に着いたのは6時だった。ようやく夜が明けようとする峠からは、逆光の中に八ヶ岳の大同心のような冠山の特徴のある姿が望まれた。天候は回復傾向にあり、上空の雲は徐々に薄くなって南の方には青空が広がってきた。
早速支度をして冠山目指して出発する。右手の揖斐川源流の谷には一面に雲海が広がり、そこから盛んに雲が湧き上がってきては稜線を越えると音もなく消えて行く。朝露に濡れた笹の中の道を進んで田代尾根の頭を越え、未だ紅葉には少し早い樹林の中の道を1時間ほど行くと冠平に着く。冠平は冠山直下に広がる笹原で、春から夏にかけては色とりどりの花が咲き乱れるとのことだ。冠平から急な道を登って冠山山頂には7時45分に着いた。
山頂まで来る間に空も晴れ渡り雲の動きも穏やかになってきた。一休みする間もなく狭い山頂からの360度の眺めを楽しむ。まず東の方には若丸山越に6月に登った能郷白山が他の奥美濃の山とは桁外れの大きさで横たわっていた。その右手には雲海に覆われた揖斐川谷の彼方に未だ見知らぬ奥美濃の山々が延々と連なっており、また振り返れば別山を従えた霊峰白山が遙か北の空に浮かんでいた。山頂から見える眺めは殆ど山ばかりで、平地は僅かに武生方面に見られるのみだった。やはり奥美濃は人里から離れた奥深い山だという印象を強くした。
山頂を1時間ほど独り占めしてから下山の途につく。途中、冠平から若丸山方面への国境稜線の様子を見に行ったが背丈ほどもある藪に遮られて前進は叶わなかった。多くの人とすれ違いながら冠山峠に戻ったのは10時ごろ。しかし朝とは違って峠は車と人で一杯で、さらに車が続々と到着している状態だった。帰りは岐阜県側へ下って揖斐川沿に戻る。既に昼近くになっており、冠山から見たあの雲海はあとかたもなく消え失せてしまっていた。
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